足かせとなる最低面積のしばり

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建設協定の例

国土交通省の調査によると、2007年末現在の建築協定は約2800件に上る。とりわけ、高級住宅地には、建築協定のあるケースが多い。乱開発を防ぎ、住環境にこだわることでブランドイメージを高め、資産価値を保ってきたからである。たとえば、首都圏では深沢(東京都世田谷区)、聖蹟桜ヶ丘(同多摩市)、鵠沼(神奈川県藤沢市)、近畿圏では千里(大阪府豊中市)、甲陽園(兵庫県西宮市)などに建築協定区域がある。

ところが、皮肉なことに資産価値を保つための建築協定が、相続に際してあだとなってしまう。協定があるために、宅地を売買しにくくなるのだ。特に足かせとなるのが、最低面積のしばりや分割の禁止の規定だ。

バブル期と比べて地価が下がっているとはいえ、高級住宅地である程度まとまった土地だと、どうしても価格が高くなって売りにくい。そこで考えられる手が、土地をいくつかに分けて建売住宅にし、値ごろ感のある価格で売っていく「ミニ開発」である。しかし、「最低敷地面積50坪」だったり、分割が禁じられていると、その手が封じられてしまう。

だったら、アパートかミニマンションを建てて“サラリーマン大家さん”になり、賃貸収入を得ようかと考える人も出てくるだろう。しかし、なんとここでも建築協定の壁にぶつかってしまう。「建物は一戸建て個人専用住宅」と決められているケースが少なくないからだ。これから相続について親子で話し合うのなら、自分の土地に建築協定の網がかかっているのかをチェックしておきたい。

なお、建築協定に似た地域独自の建築規制として、都市計画法に基づく「地区計画」という制度もあるので要注意だ。建築協定と違って、市区町村が都市計画の一環として運用するため、住民の合意は関係なく、対象の土地すべてに適用され、規制に違反した場合は是正を命じられる。地区計画の例としては、新百合ヶ丘(川崎市)や光が丘(東京都練馬区)などが挙げられる。

大手不動産会社営業マン 三住友郎
これまで2000件以上の土地・不動産の売買の実績を持つトップ営業マン。不動産に関する「抜け道」のエキスパートでもある。
(構成=野澤正毅)
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