「だからMBAは駄目なんだ」

それが数カ月経ち、1年経ちとするうちに、小さく賭けていたつもりがどんどん借入金が膨らんでいくんですよ。妻にはいいニュースだけを伝えるという方針をとることにして、「いやあ、今月も調子いいんだよね」なんて言ってごまかしていましたが、内心ではひやひやしていましたね。

転機になったのは、あるとき外国人の知人に、以前から検討していたEコマースの事業のアイデアを持っていったときのことでした。そのときにすごく怒られたんです。はっとさせられたのは、「だからMBAは駄目なんだ」と言われたことでした。

「MBAっていうのはマップをくれる。でも、マップというのは目的地があって、そこに最短で辿り着くためのものだろう?」と彼は言いました。

「起業に必要なのはコンパスで、道は書いてない。方向だけ指し示しているそのコンパスとは、パッションのことだ。お前のこのビジネスにパッションはあるのか?」

そう言われて、「いや、ないです。すみません」と(笑)。それで、じゃあ自分は何が好きなんだ、どんな事業ならパッションを抱き続けられるんだろう、と考えて辿り着いたのがコンテンツマーケティングという事業だったんです。

今の時代はインターネットが登場して10年以上が経って、人の意識そのものも変わってきたフェーズに入っていますよね。その中で、消費者というものが商品の売り手よりも力を持つようになってきたわけです。つまりどんなにいいモノをつくっても売れないという現象が起きて、それを売るためには「なぜ買わなければいかないのか」という需要創造をやってかないといけなくなった。それはものづくりに力を入れてきた日本企業が、なかなか世界で戦える力を持てなくなっている理由でもあると思うんです。

僕はフェイスブックがちょうど流行り始めたころにアメリカへ行き、新しいマーケティングの手法が登場しているのを目の当たりにしました。日本でもマーケティングの世界にイノベーションを起こすことで、これまで良い商品があってもチャンスを持てなかったような会社を応援できるかもしれない。それこそ既存の広告市場を打ち壊すような事業ができたら、本当に面白いだろうなってワクワクしています。

イノーバ:主力事業はコンテンツマーケティング。コンテンツマーケティングとは企業がメディア企業のようにウェブサイトなどを通じて情報を配信し、製品に自然と興味を抱いてもらおうとする新しいマーケティング手法。設立2011年。社員数20人。
関連記事
なぜ成功者は貧乏でも副業しないのか?
今の20代はなぜお金がなくても幸せなのか
ベストセラー「金持ち父さん」が落とした誤解
「リストラ候補者」はなぜ、最年少役員に這い上がれたか
人生で次のステージに進むには