女性管理職“促成”で周囲のやる気↓少子化↑

もう一つ、女性は男性に比べて課長以上に昇進したい人が少ないという事実も忘れてはならない。一般従業員に課長以上の昇進希望があるかを聞いたところ、男性は59.8%があると答えたが、女性は10.9%にすぎない(独立行政法人労働政策研究・研修機構調査)。

その理由で最も多かったのは「仕事と家庭の両立が困難になる」というものだ。これに関して大手事務機器メーカーの女性人事課長は「女性社員は男性と同じようにバリバリ仕事をしたいという上昇志向の女性もいるが、給与があがらなくてもいいからほどほどの仕事をしたい人、管理職になりたいが出産・育児の両立は無理と諦めている3タイプがいる。管理職と育児の両立が無理と考えている女性に前を向いてもらうには、長時間労働慣行や男性社員の理解がないと進まない」と指摘する。

女性の登用の前に企業が取り組むべき課題は、出産・子育てを機に辞めさせない環境整備と子育てによるキャリアのブランクをフォローすることだ。

たとえば在宅勤務などの制度面の改善や多様な働き方ができる働く場のインフラの整備。そして最後に何より大事なことは、女性はもちろん男性の意識を含めたカルチャーを変えていくことが必要だ。

こうした仕組みを地道に改善していくことなく、性急に女性登用を進めてしまうと、単に企業の生産性の低下だけではすまない事態になる可能性もある。

現在、女性管理職の約7割に子どもがいないという事実をご存知だろうか。

その理由は未婚であるとか、結婚しても子どもを産み育てにくいといった様々な事情もあるだろう。仕事か子どもかの選択を迫られて子どもを諦めた人も多いのではないか。

子どもを産み育てる環境が不備なまま、性急に登用を促進すれば、少子化にますます拍車がかかることになりかねない。

もちろん、安倍首相は仕事と子育ての両立支援の拡充も要請しているが、2つが同時に功を奏するかどうかはわからない。

それにしても企業や経営者が一斉に女性登用に血道を上げている姿を見ると、お上の意向に逆らえない体質や業界横並びの行動が依然として続いていることに驚かざるを得ない。

仮に2020年に女性の管理職比率30%を達成したとしても、経済成長どころか、促成登用のひずみや少子化の影響で取り返しのつかない事態になっていなければいいのだが。

日本銀行の異次元緩和によるインフレ政策の帰結と同様に“女性管理職インフレ”政策もアベノミクスの帰趨に大きく影響することは間違いない。

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