今春入社の女性が6年後、"全員"課長になれる会社
それを受けて経団連や各企業はこぞって女性比率の計画数値を公表し、登用に力を入れている。だが、無理矢理、数合わせのために目標を達成しても必ず弊害が発生する。すでに企業の現場では問題も発生している。
ある住宅設備メーカーの人事課長は「経営トップは女性管理職を増やせと言っているが、30%を達成しようにも女性社員が全体で2割もいない。課長手前の係長も5%しかおらず、全員を課長に上げても足りない。すでに女性の課長候補者のほとんどは昇進させたために、課長手前の女性社員の空洞化も発生している」と語る。
また、職場では不穏な空気も流れていると語るのは金融業の人事課長だ。
「昇進審査では『女性枠』というものが存在している。本来は課長にふさわしい経験と能力があるかを審査するが、女性に関しては『女性の割には優秀だよね』といった視点で昇進させる。本来なら選ばれないのに、下駄を履かせて昇進させていることが職場にも伝わり、逆差別ではないかという声もある」
これでは女性もいい迷惑である。本来、課長になるべき女性が昇進しても、同僚や部下から色眼鏡で見られることになり、仕事もやりにくいだろう。
もともと女性社員が少ない建設業はもっと深刻だ。
人事課長は「トップの意向で史上最年少の女性課長を誕生させたが、2段跳びの昇格だった。といっても部下を率いる課長ではなく、部下なしの専門職課長だ。正直言ってマネジメント能力はないが、部下なし課長に上げている女性は多い」と語る。
このまま行けば今年入社した女性を2020年には課長にしなければ間に合わないという嘆く人事担当者もいる。
経営トップの意向で数値目標が目的化した昇進が続くと上司と部下の信頼関係が崩れ、当然、業務に支障を来し、生産性が低下することになりかねない。
現在、多くの企業は「名プレイヤーイコール名監督ならず」の考えのもとで、管理職にふさわしいリーダーシップや部下の育成など経験と能力を持つ「マネジメントのプロ」の育成に注力している最中だ。
そんな矢先にたいした基準も設けず、促成で女性管理職を無理矢理増やすようなことをやっていると、企業の発展どころか成長を阻害することになってしまう。