【中原】今後、一括採用はなくならないにせよ、減っていくと思います。採用活動自体が多様化するのです。そうすれば、採用は「大学3年生、4年生時に経験する一時期のイベント」ではなくなります。つまり、大学生が4年間にわたってつきあい、意識しなければならない「プロセス」になっていくのです。にわかに広がる「通年採用」の制度は、これを後押しするでしょう。就活は「イベント」から「プロセス」に変わっていくのです。

【Bさん】そうかもしれません。その意味では学生は早い段階からキャリアを意識する必要があります。働くということを小、中学生の頃から考えるようにしていかないと。大学に入ってからでは間に合いません。逆に、企業側はもっとそうした啓蒙活動をしていかないと、学生たちがかわいそうな気がします。そうしないと、学生たちはより早い段階から、限られた選択肢の中、聞いたことのある会社、職種の中から進路を選ばざるを得ない、ということになってしまいます。こうした啓蒙活動は、国だけに頼るのではなく、民間企業も積極的にやっていくべきだと思っています。私は特に人材業界にいるので、その使命感は強く持っています。

【Cさん】正直言うと現行の一括採用のシステムは崩れてくるのではないかと思っています。人材を集めるのも、国内だけでなく、ワールドワイドになってくると、一括採用なんてもう言っていられない時代が来ていますし。通年採用みたいな形で採用を整えていかないとダメなんだろうなとも感じています。また、キャリア教育という観点では、弊社でも中学生のキャリア教育などにも可能な限り参加しています。早いうちから企業イメージを知ってもらえる方がいい。

【中原】なんと、中学生から採用広報活動が始まっているんですね。ですが、中学生向けのキャリア教育からインターンシップ、おまけに通年採用になったら、採用活動というのは年間を通してやり続ける「通年プロジェクト」になりますよね。

【Aさん】その通りです。昔は採用担当は季節労働者と言われていたんです。それが今は、1年間「常に繁忙期」です。

【Bさん】数年前まではゴールデンウィーク明けには休みを取れたんですが、今年は打ち上げすらできなかったんですよ!

最後の採用をしながらインターンが始まってしまったので(泣)。

【中原】それは大変ですね。皆さま、お忙しいところ、本当にありがとうございました!

いかがでしたでしょうか。すでに経団連会員企業のうち約4割が倫理憲章に賛同していないといいます。優秀な人材確保のためには手段を選ばない――採用を巡る仁義なき戦いは、さらにその激しさを増していくようです。

(構成=井上佐保子)
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