「尖った人材」の採用と育成

【中原】さて、各社「尖った人材」を確保し、多様性を担保するために、様々な入口ができ、マルチルート化しているというわけですが、それほどまで欲しいけど採れない「尖った人材」とは、具体的にはどんな人材なんですか?

【Aさん】ウチの会社で言えば、3度の飯よりプログラムが好き、という「ITバカ」みたいなタイプです。そうした人材は、必ずしも普通の大企業に入って働くことをクールだと思っていない。むしろ、どこにも依存せずインディペンデントで、自分の腕一本でどうにでもなるぞ、と思っているようなタイプのエンジニアです。彼らの望む働き方、ライフスタイルに合わせていこうとすると、もうスーツ着用で、9時5時で、といったものではない価値観を提供しなければダメです。外国人もいますし。かといって、営業職にまでそれを適用するかというと、これはまた全然違う話で……職種による違いはありますね。

【中原】なるほど。ですが、そうした「尖った人材」を採用すると、入社後の扱い方も気を遣いますよね。

【Bさん】当社では、尖った人材は最初からハレーションを起こさないような部署に配属しています。というより、採用の段階からある程度配属先を想定していますね。

【Cさん】私は配属先のマネジャーの資質が重要だと思っています。今回、初めて調査、分析してみたのですが、実際に配属したあとに、成果を出しているかどうかは、個人差はあるものの、マネジメントの資質に左右される、ということが明確にデータに表れてきました。

【中原】わたしの手持ちのデータからも、そのことが言えますね。やっぱり、最大の要因は、職場であり、マネジャーですよ。ただし、それは本人には選べないけれども。どんなに「尖った人材」でも、育成能力がなく、多様性を受け入れるような資質のないマネジャーのところに入れると、やっぱり活躍できてないんですよ。上司は重要です。

【Aさん】そうした人材に辞められてしまうのが一番のリスクですので、配属には慎重になります。今はまだ、日本人に対しては「配属先は約束しないよ」というスタンスですが、今後、そうした人材に対しては、「あなたにはこの仕事をやってもらいたい」と説明し、納得してもらって配属する必要があるかな、と思っています。

【Cさん】「配属リスク」という言葉をご存じですか?

最近、東大卒など高学歴の人で、ベンチャー企業に入社する人がかなり増えてきているという話を聞いたのですが、彼らがなぜ大企業に行かないかというと「配属リスクがあるから」という理由なんです。どこに配属されるかわからない、ということがリスクとして捉えられているんですよね。

【Aさん】なるほど、「配属リスク」はこちらとしても、極力減らしていきたいですね。