デジタルテレビは、やめるか、売るかだ
平井社長はテレビ事業を分社化して継続するというが、最終的な結論は2つしかない。
アナログ時代の「トリニトロン」ならいざしらずデジタルテレビに、もはやソニーの優位性はない。やめるか、売るかである。売る場合にはパソコンと違ってブランドがないので「ソニー」のブランドで売らせるしかないが、それはできないだろう。
したがって分社化したテレビ事業はしばらくはBRAVIAで売り、名前が浸透してきたときに「売却」というシナリオが透けて見える。
パナソニックがモトローラを買収したときに「QUASAR」という意味不明のブランドを押しつけられたのと似ている。こうした轍を踏まないためにLENOVOはIBMのパソコン事業を買収した際にはIBMブランドを5年間使う権利を取得し、その後はThinkPad名を踏襲する、という周到さで成功している。「分社化して事業継続」というのは、テレビについて戦略がないと言っているに等しい。
おそらくテレビ事業を“裸”にすればテレビ事業内部の醜態が見えるようになるので、人減らしなど「上から言わなくても自発的にやるだろう」という「いじめの構図」をソニーの首脳部は頭に描いているのだろう。
一方で、平井社長は「スマホ」と(出身母体の)「ゲーム」に注力するという。確かにソニーのスマホ、「XPeria」は現在よく売れている。携帯電話事業関連のトータルの売り上げも1兆円を超えるが、部門収益は赤字。今後コモディティ化が進んで、スマホが5000~1万円に低価格化していく中で、現状の赤字の携帯部門が黒字化する可能性は限りなく小さい。
テレビやパソコンが陥ったように、スマホもまた「コモディティ化する」というデジタルエレクトロニクスの“十字架”を背負っている。「iPhоneでさえ非常に苦労してきている時代に、ボリュームだけで収益の出ていないスマホで反転攻勢する策はあるのか」。これが平井社長への第1の質問である。