第2の質問はゲーム事業。任天堂の苦悩をどう見ているのかということだ。冒頭で述べたように、コンソールタイプのゲーム機で「PS2の夢よもう一度」という戦略は、私から言わせればほとんどアウトなのだ。
2000年にPS2を出したときに、ソフトメーカーが群がってソフトを作ってくれたような状況はもはやありえない。スマホ対応に切り替えているから、PS4のスペックを使いこなすソフトを作れる会社はもうほとんど残っていない。
06年に、PS3が出たときには、400人のクリエーターを投入して4年かけて大作を開発するというような“巨艦大砲主義”に走ったソフトメーカーもあった。コンソール用のゲームを作っていた会社は皆、これに足をすくわれてスマホ用のソフト開発に出遅れた。名もないソフト屋からコンテンツを買って、名前だけつけて流すしかなくなったのだ。もはや一発空振りしたら会社が傾いてしまうリスクを冒してまで、大作ソフトを作るメーカーはほとんどない。
結局、コンソールマシンの台数に比例した本数しかソフトは売れないわけで、PS4のゲームソフトのラインアップが今後、充実するとは思えないし、お一人様全盛時代に友人とシェアする機能でコア・ゲーマー層が爆発的に伸びるとも思えない。
ちなみに「スマホのゲームはやらない」とコンソールマシンにしがみついている任天堂の戦略も、凡庸な常識人である私には理解できない。スーパーマリオやドンキーコングといった同社のわかりやすいコンテンツは、それこそスマホ向きだ。
岩田聡社長は「ヘルスケア分野に注力する」と言っているが、スマホの世界にはヘルスケア関連のアプリがすでに山ほど出ている状態だ。ヘルスケア領域で、常に携帯できるスマホにWiiやDSで対抗するには、よほどのアイデアが必要だ。奇跡的なアイデアが出たとしても、半年後にはそれがスマホのアプリで安く売られているだろう。