社内の分業体制を見直し「駆逐艦の群れ」を構築

図を拡大
意思決定プロセスも「爆速」へ

「10倍挑戦、5倍失敗、2倍成功」

宮坂が掲げた新生ヤフーのスローガンの一つだ。先が見通せない「スマホ大陸」の地図を描くためには、試行錯誤をできるだけ繰り返すしかない。そこで生まれたもう一つのキーワードが「爆速」だ。

井上体制でのヤフーは「石橋を相当叩いてから渡る」(川邊)というような体制だった。たとえばサービスを立ち上げるときには、提案書を作り、要件を定義し、納期を定め、テストを繰り返す必要があった。社内分業が高度に進んでいるため、企画、開発、運用といった部門間でのやりとりは厳しい。サービスは納期通りに手堅く仕上がるが、「まるで外部のシステム会社に発注するかのような手間がかかっていた」(村上)。

図を拡大
「スマホ・ファースト」でアプリに注力

新体制では、部門ごとの「縦割り」を解体。その代わり、プロジェクトやサービスごとに5~10人の小さな組織――駆逐艦の群れ――を構築した。サービスの機能追加でも、これまでは部長や本部長、役員といった段階ごとに決裁が必要だったが、新体制では「サービスマネージャー」の決裁だけで進められるように変えた。さらに予算管理はプロジェクトごとに独立して行い、“駆逐艦の艦長”に経営者意識を植え付けた。

成果は目に見えて表れている。スマートフォン向けに新しく開発した省電力アプリ「スマホ最適化ツール」は、公開から4カ月半で100万ダウンロードを達成。「ヤフーニュース」などパソコンで人気のサービスのアプリ版もアプリストアでの上位を維持している。

ニールセンの調査によると、13年4~10月の「ヤフージャパン」アプリへの訪問者数は、全アプリ中10位。半年間で45%増加し、ベストテンの中で最も成長したアプリとなった。ヤフーの提供するアプリの累計ダウンロード数は、1億3000万以上で、この1年で2倍以上の伸びを示す。