安全性と利便性は二律背反の関係にある
スマートフォン上のアプリを介し、個人間で金銭をやりとりするP2P送金が海外で急速に普及中だ。米国では毎年2ケタの伸びで市場規模が拡大し、2020年には約3200億ドルに達するとの予想もある。
P2PとはPeer-to-Peer(仲間同士)、もしくはPerson-to-Person(個人間)を意味する。国内でもLINEの「LINEPay」、ヤフーの「Yahoo!ウォレット」などが登場し、アプリ上の操作だけで知人への送金や、飲食代の割り勘などができるため、若い世代を中心に関心が高まりつつある。だが、海外と比べるとその普及はいまひとつだ。
「直接現金の送金を行う場合、利用開始時の本人確認が海外では必要でないケースも多いのですが、日本では法律で義務づけられているのが一因。本人確認はマネーロンダリングなどの不正を防ぐうえで重要ですが、安全性と利便性は二律背反の関係にあります」と解説するのは、三菱総合研究所の山野高将研究員。
これまで個人間送金サービスを手掛けてきたのはIT系企業が中心だった。しかし、SBIホールディングスやメガバンク3行などからなる企業連合も、アプリ上の操作で他行口座への送金が可能になる送金サービスを開始予定だ。大手金融の参入を契機に国内の個人間送金の認知が進めば普及も期待できるだろう。
(写真=Getty Images)