【茂木】大切なのはスピード感ですよね。僕は、「小泉改革」以来、日本の有権者が求めていることはただひとつ、「あまりにも効率の悪いパブリックセクターを何とかしてくれ」という思いです。これは大学にも同じことがいえます。大学教授と話していると、まるで市役所の窓口の人と話しているみたいだと、よく悪口を言うんです。パブリックセクターと教育の立て直しは、日本のアジェンダとして一番重要だと思います。その点で、大阪市の橋下徹市長が支持を集める理由もよくわかります。

【津坂】橋下さんは変化を起こそうとしていますよね。自分なりの仮説を立てたら、とにかく実行する。バットを振るんです。10回振って3回当たれば、3割打者です。1回も振らなければ、ゼロです。得点できません。橋下さんはともかくバットを振って点を取りにいっている。それだけでも素晴らしいことだと思います。

【茂木】外資のファンドを「ハゲタカ」と呼んだり、「小泉改革」が格差を助長したと批判したりする人たちがいますが、それ以外に方法がないんだから仕方ないだろうと思います。現状を変えないと、国が滅びてしまう。

【津坂】世界の一員として戦うかどうか。戦って勝つチャンスをもらうか、戦う前に諦めるか。現状維持では通じない時代になったのではないかと思います。

TPGキャピタル代表 津坂 純
1961年、東京都生まれ。ハーバード大学卒業。ハーバード・ビジネススクールでMBA取得。メリルリンチ、ゴールドマン・サックスなどを経て2006年からTPGキャピタル代表。TPGは運用資本4兆円以上のPEファンド。卒業生組織である日本ハーバード・クラブのディレクター(役員)も務める。
脳科学者 茂木健一郎
1962年、東京都生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、同大学大学院理学系研究科物理学専攻課程修了。現在、ソニーコンピュータサイエンス研究所上級研究員、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科特任教授。著書に『脳と仮想』(新潮社)など。
(山田清機=構成 門間新弥=撮影)
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