敵は「スーパー、コンビニ」にあり
サンドラッグの才津達郎会長は言う。
「めざすのは昔の薬屋。コンビニに奪われないうちに高齢客を取り込みたい。向こうも薬を置く時代だが、置くのと売るのとはまったく違う」と対抗心を燃やす。東日本大震災以降、人々に身近な店として存在感を増すコンビニへの危機感は強い。
若い女性客も多い繁華街のドラッグ店は、高齢者が入りにくい。そこで医薬品を軸に、おにぎりなどの加工食品も置く“高齢者向けコンビニ”を独自に開発、13年7月に東京都江戸川区に開いた。一般のコンビニは定価だが、同店はペットボトルの清涼飲料水が100円以下。年金で暮らす高齢者のサイフにやさしい。レジが混雑する盛況ぶりだという。
19年間君臨した社長を退き、会長に就任した才津さんは、長崎県の五島列島出身。地元の県立高校卒業後、集団就職で上京。新宿のアメミヤ商事で販売の腕を磨く。その7年後にサンドラッグに転職した。
サンドラは出店場所を厳しく見極めることでも有名だ。
「中野区のサンモール商店街のように、通り抜けのために歩く人が多く、歩行も速い場所の店は、間口を広くしないとお客様が入りにくい。それから通行量調査で高い数字が出ても、同じ人が何回も行き来している商店街もある。これはニオイをかぎ分けるしかない」と、身体に刻み込んだ商人の嗅覚で出店先を決めていく。
だが、少年時代は内気で引きこもり気味だったと言い、人材育成に一家言を持つ。「適材適所という言葉はあまり好きではない。それは50歳を過ぎてからでいいんじゃないですか。それまでは本人も気づかない潜在能力が開花することがある。親戚中に『挫折して帰郷するだろう』と言われていた僕でも、何とかなっちゃいましたから」。