ドラッグストアは、この10年で約2倍、6兆円に拡大した巨大市場だ。数少ない成長分野「健康市場」をめぐる戦いの実相に迫る。
医療や介護に事業の軸足を置き、高齢者を取り込むのがウエルシアだ。人口約48万人の千葉県松戸市。東武線と新京成線にはさまれた住宅街に、ウエルシア関東・松戸五香店がある。店長の鎌田百合子さん(49歳)は「周辺はドラッグストアとコンビニ、病院と介護施設ばかりです」と説明する。
13年前、子どもの幼少時にパート職で入社、その後社員に転じた。大学生と高校生の母親、主婦の視点も生かし、品揃えはスーパーも意識してビールの大瓶まで置く。
同店の特徴は出店に合わせて誘致した介護施設(ウエルガーデン松戸)と、病院(メディカルクリニックマリア松戸)があること。調剤薬局も併設し、営業は朝9時から深夜12時と長い。
「隣の病院以外に、約200の医療機関の処方せんを受けつけています。都内に勤める会社員の方が、職場近くで受診した病院の処方せんを持って、夜遅くに来店されることもあります」
薬剤師の土屋真路さん(33歳)はこう説明する。店内にはクリーンルームもあり、注射の対応も可能だ。市が主催する介護事業の催しで、調剤薬局の役割を説明したところ、取引につながったという。看護師やケアマネジャーとの連携を密に、患者をサポートする。
店長の鎌田さんがめざすのは「駆け込みドラッグストア」だ。「当店は6割が常連の方。買い物もされますが、『両替してほしい』『○○駅にはどう行くのか』といった問い合わせも多いのです。気軽に来店していただきたい」。
時には中年女性が、困った表情で介護用品売り場で立ち尽くすことも。
「声をおかけすると『実はおばあちゃんが、急にお漏らししちゃって』から始まり、家族構成や悩みまで話される。誰にも言えないストレスがたまっているのでしょう。お客様が少ない時間帯は、30分ぐらいお聞きすることもあります」