政府が6月14日に閣議決定した成長戦略に、全面解禁が盛り込まれた一般用医薬品(大衆薬)のインターネット販売は、一気に戦国時代に突入しそうだ。
閣議決定を受け、ドラッグストアの業界団体の日本チェーンドラッグストア協会が同日、会員企業に自粛を求めてきたネット販売の解除を決めた。会員企業は参入準備を本格化するが、薬ネット販売には異業種の参入も相次いでおり、業種入り乱れた乱戦が予想される。
医薬品のネット販売をめぐっては、今年1月、最高裁が「省令で規制する根拠はない」とし、厚生労働省が副作用のリスクが高い第1類と第2類のネット販売を一律に規制する省令を無効と判断した。判決を受け、原告でネット販売のケンコーコムなどは第1類の販売に踏み切り、実質解禁状態にあった。政府の成長戦略は、これにお墨付きを与えた格好だ。
しかし、成長戦略は最終的に第1類のうち25品目を販売解禁の例外対象としたことで、安倍晋三首相がみずから表明した「全面解禁」からは大きく後退し、「名ばかり全面解禁」との酷評も。薬ネット販売の解禁を審議してきた政府の産業競争力会議の民間議員で、安倍首相に薬ネット販売の全面解禁を促したとされる楽天の三木谷浩史会長兼社長も、この点は「規制強化だ」と憤りを隠さない。
しかし、名ばかり批判があろうとも、解禁を機に参入を目論む企業にとっては、大きなビジネスチャンスであることに変わりはない。日本チェーンドラッグストア協会の自粛要請解除を受け、マツモトキヨシやサンドラッグなどの大手ドラッグストアは第1類、第2類のネット販売の準備に入り、参入が相次ぐのは確実だ。
一方で、異業種の薬ネット販売参入への動きも活発化している。オフィス向け事務用品ネット販売最大手のアスクルは6月18日、医薬品のネット販売を開始した。運営する個人向け日用品通販サイト「LOHACO(ロハコ)」で副作用リスクが低く、日本チェーンドラッグストア協会も自粛対象外としていた第3類を販売し、8月には第1類、第2類にまで広げる。取扱品目は最終的にはネット通販業界で最大となる約4000品目となり、数年後に売上高100億円を目指す。
異業種ではすでに第2類、第3類を扱っているイオン、ビックカメラも第1類まで対象を広げることが確実視され、競争は一気に過熱しそうだ。