ドラッグストアは、この10年で約2倍、6兆円に拡大した巨大市場だ。数少ない成長分野「健康市場」をめぐる戦いの実相に迫る。
地場を足固めして「中央攻め」
調剤重視型ドラッグの先駆者であるスギ――。900弱のグループ店舗のうち、調剤併設率は6割と大手各社の中で最も高い。創業者の杉浦広一会長の方針は明確だ。
「何でも病院に頼るのでは国の医療費がパンクする。当社は『地域のかかりつけ薬局』として調剤を重視し、在宅医療や訪問介護に力を入れてきました」
夫人の昭子さん(副社長兼CSR室長)と二人三脚で事業を拡大してきた。26歳で調剤薬局を開いたが、大学卒業後に入社した鬼頭天昌堂薬局(店名は「キトー薬局」)も調剤型だった。「開業まで2年半、そこで修業できたのがよかった。薬の調合は私の原点」と振り返る。
夫婦で働く個人薬局で、来店客の症状を聞いて薬を処方し、信頼を積み重ねてここまで発展した。最近、印象的な出来事があったという。
「30年前に薬を調合販売した高齢女性から声をかけられました。あの薬はよく効いた。本当にありがたかったと言われましてね。今でも覚えてくれていたんです。僕が近くの店舗に行くと、多くのお客様から、あらスギさんと言われます。ほかの地域でもそう呼ばれるように、地域密着でやっていきたい」
杉浦会長が「今後の当社を象徴する店」と語る、スギ薬局・熊味店に足を運んだ。創業の地、愛知県西尾市にある店舗面積約260坪の店だ。
店に入ると目立つのは、広いイベントスペース。血圧や体脂肪率など気になる項目をチェックできる機器が並び、中高年が思い思いに測定している。ここで「健康相談会」や「医療相談会」も行う。高齢者向けかと思いきや、「乳幼児を連れたママも多いです。ベビーセミナーもあれば、朝の早技メーク講座も実施します」。店長の中根直也さん(31歳)はそう説明する。