――われわれがデータや数字と向き合うときに大切なポイントはどのようなことでしょう。

【鈴木】数字の向こうにお客様の声を聞くことができるか。POSに代表される販売データは過去のデータです。しかし、本文でも紹介する「都心のオフィス街のコンビニで朝売れるサラダ」の事例のように、売り手から見ると、販売の量が少ないため、見逃してしまいがちでも、買い手から見て、お客様の声を聞くと、「ダイエットのためオフィスで朝食がわりに食べる」「昼は混雑するため朝早めに買っておく」といった、これまで気づかなかった潜在的ニーズを発掘できたりする。

売り手はとかく、売れた結果の量に目が向きがちですが、売り手から買い手へ視点を変え、問題意識を持って見れば、時間軸に沿った細かなデータの動きが浮かび上がる。それをもとに仮説と検証を行うことで、初めて数字は活きてくるのです。問題意識も持たず、仮説と検証も行わずにデータを見ても、何も浮かび上がりません。それはデータの活用などとは呼べず、単に数字に振り回されているだけと思うべきでしょう。

そして、もう1つつけ加えれば、POSを始めとするIT機器やコンピュータに振り回されてはいけません。ITはあくまでも、人間が判断し、答えを導き出すためのデータを出す道具にすぎないのに、自分たちがどんな価値を生み出すのかはっきり自覚しないまま、ITを導入すると、本末転倒してITが出すデータそのものを答えだと思い込み、数字に振り回されてしまう。そして、ITを使うことが仕事であるように勘違いしてしまう。

しかし、道具はそれを使うだけではなんら成果は生まれないこと、価値を生み出すのは人間にしかできないことを忘れてはいけません。

『新装版 鈴木敏文の統計心理学』(プレジデント社)

[著] 勝見 明

セブン-イレブンはなぜ、ライバルより日販が20万円も高いのか?それは「ビッグデータ」をどう捉えるかという鈴木敏文の「統計学」に理由があったのだ……。

(インタビュアー=勝見明 撮影=尾関裕士)
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