「聖域」にどれだけ重要な仕事ができるか
集中力に関しては、「1日や1週間のうちで、最も集中力を発揮できる時間帯を把握しているか」「集中力を発揮できる時間帯や日を十分に活用しているか」の設問で、年収1500万円以上が「少しあてはまる」まで含めて20ポイント前後の差をつけている。
集中力を発揮できる時間は、最も効率が上がるレバレッジの利く時間であって、1日における「聖域」ともいうべき時間帯だ。通常は午前中だろうが、この「聖域」にどれだけ重要な仕事ができるかがポイントになる。
経済評論家の波頭亮氏によれば、仕事には機械に置き換えることが可能な「マニュアルレイバー」と人間にしかできない「ヒューマンワーク」があるという。当然ながら「聖域」には付加価値の高い知的な「ヒューマンワーク」をすべきである。伝票整理などの作業に充ててはならない。
税理士の資格を取ったある女性が「家事は眠くなってからする」と言っていたが、頭の働く「聖域」には勉強をして家事はしないという発想は面白いと思う。
私自身は「聖域」に締め切りのある仕事はしない。以前はこの時間帯にメルマガを書いていたが、締め切りのある仕事はどんな時間帯でも自分を追い込めばできるので、「聖域」には締め切りのない考える仕事を充てている。
人に仕事を頼むとき、できるだけ早い段階で頼み、打ち合わせの時間を十分にとるのは当たり前のことだろう。これに関する設問の中では「仕事を頼むときは全体のスケジュールや、占める役割を伝える」の結果が目を引いた。「あてはまる」と答えた人は年収1500万円以上では500万円台の2倍以上になっている。
役割を伝える大きな理由は、相手のモチベーションを上げることだろう。これにより、よい成果につながることは自明だが、相手を尊重しているところに意味がある。相手が部下なら長期的視点に立った人材育成を意識していることになる。逆に、役割を伝えないのは、目の前の作業にとらわれ、相手の気持ちや成長まで考えが及んでいないということだ。
人は人のために働くことで報酬を得るのであって、作業はそのための手段にすぎない。作業をしたからお金をもらうというのは、「マニュアルレイバー」の発想だ。出来上がった製品の向こう側にも必ず人がいて、人の役に立ち、人に感謝されるほど、お金がついてくる。人にフォーカスするほど稼げるというのは、1つのセオリーだと思う。