【茂木】そのスティーブ・ジョブズさんですが、再び体調を崩されて休養されています。(2011年1月時点)

孫はS・ジョブズ(写真)をダ・ヴィンチと並ぶアーキテクトだと語った。(時事通信フォト=写真)

【孫】ねぇ、本当にかわいそうに。

【茂木】孫さんご自身も、若いころに肝炎をやられて快復されたわけですけど、ソフトバンクにしてもアップルにしても、1人のカリスマ経営者の手腕に依存している企業、まぁご自身の思いはともかく世間ではそう見なされていますが、そのような企業にとっての問題点、あるいは脆弱性についてはどのようにお考えですか。

【孫】まずアップルの場合でいえば、これまであの会社が成功してきたのはスティーブ・ジョブズが好き勝手に……、といえば語弊があるかもしれませんが、自分の思うように会社を動かしてきたから大成功してきたわけです。かつて彼があのままアップルに戻らなければ、あの会社は間違いなく倒産するか身売りをせざるをえなかったわけですから、少なくともアップルにとってみれば、ジョブズというカリスマ経営者の君臨は、功罪でいえば功のほうが大きい。

でも弱点があるとすればやはり後継者問題ですよね。カリスマ経営者は成功すればするほど、後継者問題がクローズアップされます。

【茂木】孫さんは現在、ソフトバンクアカデミアという後継者育成のための機関をつくられていますね。

【孫】ええ。僕がソフトバンクを始めるときに思ったのは、「一個人の生命体をはるかに超える長さの成功をおさめ、繁栄を持続させなければならない」ということでした。会社を興すということは重い責任を伴うこと。社員もいれば、お客さんもいるわけで、自分1人の代、存続すればいいというものではない。少なくとも300年は続く会社にならなければ。となると社長職も、30代くらいは継承していけるシステムをつくらなければならない。

ソフトバンク代表取締役社長 孫 正義 
1957年、佐賀県生まれ。久留米大学附設高等学校に入学、中退、渡米。81年、ユニソン・ワールド(現ソフトバンク)設立。売上高が2兆円を超え、日本を代表する一大情報通信グループに。
脳科学者 茂木健一郎 
1962年、東京都生まれ。ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー、東京工業大学大学院連携教授。「クオリア」をキーワードとして、脳と心の関係を研究。近著に、『脳の王国』『まっくらな中での対話』など。
(三浦愛美=取材・構成 鷹野晃、小倉和徳=撮影 時事通信フォト=写真)
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