根拠のない自信を抱け!

【茂木】そこからはロジックなんですね。

【孫】そう。実際にボーダフォンを買うとなったら約2兆円いる。だけど手元にあるのは2000億。ギャップが1.8兆円。手元の資金の10倍を手に入れるためにはどうすればいいか。そこから苦悩が始まるわけですよ。でもすでに成功したときのイメージがあるから、左脳を駆使してのロジックの積み重ねも、楽しくて仕方ないんですよ。

【茂木】僕、よく若者に向かって「根拠のない自信を抱け」、そして「それを裏付ける努力をしろ」というんです。でも、孫さんの人生って、まさにそれの繰り返しですよね(笑)。右脳と左脳がうまくハイブリッドされている。

【孫】順番は大切だと思いますよ。最初は根拠なんてなくていいから、自分が大成功しているイメージを持つ。努力は、その後でいいんです。

【茂木】「新30年ビジョン」の中でも、脳型コンピュータ実現のためのコンセプトを語っておられましたが、まさしくいまのお話に通じるものですね。

コンピュータと人間の1番の違いは、「直観を持つか持たないか」です。コンピュータは、最初にあらゆる手を検索してから最善の手を導きだしますが、人間はまず直観ありき。そのあとでロジックを積み重ねていきます。

だからもし、将来的にコンピュータにビジョンや直観を持たせることができたら、脳型コンピュータが実現する可能性もあると思うんです。

【孫】将棋の羽生善治名人なんかも、「最初に右脳で考える」ということを仰ってますよね。

【茂木】僕は脳科学者としての立場からも、この10年、20年の情報革命をおもしろく見ていて、非常に幸運な時代を生きていると思うんですが、この時代において興味深い特徴は、「変人が世界を変えている」ということなんです。ビル・ゲイツさんにしてもスティーブ・ジョブズさんにしても、たしかに素晴らしい才能に満ちた人物たちですけど、一方では日常生活のいろんなことに無頓着で変人でもある。でも、そういう人物たちが成功する時代というのは、文明史的にも非常におもしろいと思うんですよ。

孫さんご自身、当然、変人的な面があると思うんですが(笑)、ご自分ではどこが1番変わっていると思います?

【孫】どこですかねぇ(笑)。一見無茶だと思えるような高いゴールをガーンと設定して、そこに無理やりみんなを連れていこうとするところですかね。