かつては川崎医大の在学生の半数を占めていた附属校出身者はいまでは5分の1に。附属校の志願者・入学者が減ってきたからだ。

「最盛期は1学年70人だったのが、いまでは20数人です。少子化や中高一貫校が増えてきたのも影響していると思います」(大村教頭)

かといって合格ラインを引き下げて定員を充足させることもできない。高校の入試方式には一般と専願の2つがあって、いずれも筆記試験は英・数・国・理の4教科。その成績と面接、調査書で総合的に合否を判定する。寮生活への適性があるかどうかの見極めも欠かせない。入試倍率は年によっても違うが、おおむね3倍前後といったところ。塾などが発表する同校の偏差値は60程度だ。

ただし志願者数も合格者数も毎年変化するなかで、生徒の学力レベルは年度によってバラツキがある。そのバラツキは3年後の医大推薦入試の結果に反映され、昨年のように「9割合格」という実績が揺らぐこともある。それでも……。

「大学側が判断することですが、やはり人の命を預かる医師を目指すのですから、誰でも合格させていいわけがない。医大に入ってからも勉強についていくのは厳しいし、国家試験に受かるのも相当難しいことです」と新井校長。たとえ志願者が減っても、医大に合格できて進級していけるレベルの生徒を取りたいというのが高校関係者の本音だ。

男子も女子も、生徒たちは裕福な家庭で育っただけにのんびりしていて、そのぶん受験への気迫に欠けるのが弱みだ。大学受験へ向けて、いかに生徒のやる気を高めていくかに教員は心を砕く。昨年の不合格者増はショック療法となって、皮肉にも生徒の気を引き締める役割を果たしたようだ。

「ここは外部から受験するよりは合格する確率が高い高校です。医者になれる近道だと思っています」(2年生・柳原さん)

「学力さえしっかりつければ、高校から全員合格できます。結局は自分たち次第だと思う」(3年生・新谷さん)

と生徒たちが言うように同校は医学部への確実な入り口であることに変わりはない。医学部へ行かせたいという動機と経済力のある親には、現実的な選択肢といえるだろう。

(森本真哉=撮影)
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