生徒の9割が医学部に内部進学する高校がある。岡山県倉敷市の川崎医科大学附属高校――。全国で唯一の医科大学付属高校である。生徒数は全校で77人。1学年20数人というコンパクトな全寮制の高校だ。
「この地で病院経営をしていた川崎祐宣が、1970年に開校しました。医学の知識・技術だけでなく人間として優れた“良医”を輩出したい、そのため受験勉強に偏ることなく、子供たちをすくすくと育てたいという意図で、大学と全寮制高校を同時期に創設したのです」と新井和夫校長は語る。
これまでの卒業生1548人中、川崎医大への進学者は1400人(2012年度現在)。進学率は実に90.4%に達している。他大学の医学部や歯学部への進学者も含めると98%が医歯系学部入学を果たしているという。しかもほとんどが現役合格だ。
1年間の学費は寮費・食費を含めて550万円。別途寄付金が求められる。高校の学費としては非常に高額というほかない。
「医学部生は1浪2浪が当たり前、3浪4浪も珍しくない時代です。医進予備校だと年間1000万円近くかかるところもあるので、予備校に2年間通うくらいなら本校のほうが得だと、しかも現役合格できるとおっしゃる親御さんもおられます」
そう語るのは同校に勤務して今年で36年目という大村泰士教頭。寮の舎監も経験し、医学部を目指す生徒たちを近くで見守ってきた。
生徒はほぼ9割が開業医の子供だという。息子・娘を医師にしたいという親からすれば、高額な学費もリーズナブルに映るようだ。実際、父母あるいは兄姉が同校出身者という生徒が3分の1を占めているという。自分が行って良かったから、もしくは上の子を行かせて良かったから次は下の子も、ということなのだろう。
9割が医学部に合格するという同校は普通の進学校とはどこが違うのだろうか。1クラス20数人という少人数授業と数・英・理を重視したカリキュラム、さらに高校・大学の9年間で「良医をつくる」という考えに基づいた1・2年次のキャリア教育が特色だと新井校長は語る。