夕食後から22時半まで、食堂横の学習室で行われる「夜間学習」の様子。教員や外部講師がつき、個別指導も受けられる

医師になるという共通の目標をもって全国から集まった生徒が生活を共にする。その経験が人間味のある医師を育てるというのが創設者の狙いだった。全寮制の良さは生徒の多くが実感するところだ。

「寮生活は他人の考えていることや望みを察しないとやっていけません。まして他県から来た人とは方言も習慣も違うので、より相手を知ろうとすることでコミュニケーション力が磨かれていきます。相手のことをよく理解して、この人はこうしてほしいんだなと感じられる。そういう力はきっと医師になったときに役立つと思っています」(3年生・新谷さん)

川崎医科大学附属高校は、川崎医大、医大附属病院、医療福祉系の大学・短期大学・専門学校などとともに川崎学園グループを形成している。

その連携のなかで、川崎医大への進学率90.4%という数字もある。しかし、教員や生徒たちに「身内」意識的な安心感はない。

川崎医大は附属高校に対して推薦入試枠を設けており、その定員は30人。不合格者には、翌年に限り推薦入試での受験チャンスが与えられる。一方、高校の定員は35人だから、1浪まで含めると、ほとんどが合格できる仕組みだ。

現在3年生は26人しか在籍していないから、計算上は全員が推薦入試で入れることになるが、実際はそうはいかない。

この推薦入試は、英・数・理のペーパー試験に小論文、面接、書類審査が課されるが、審査は大学側が行っており、高校側はノータッチ。数年に1度、2割ほどの生徒が不合格になることがあるという。

昨年もそうで、教員・生徒に激震が走った。千葉から来た3年生の土井順仁君も焦りを感じたという。

「去年が厳しかったというのは聞いています。単に親が医者だから継がなきゃいけないという意識でいたら外部生に負けてしまう。僕は大学院まで進んで医学博士になりたいという目標があるので頑張れます。土日は塾に通い、毎日消灯後も勉強しています」

同校では、起床から消灯までびっしり学習スケジュールが組まれ、午後7時から就寝までの「夜間学習」では教員がついて自習+補習を行っている。

「受験前の3年生はピリピリした雰囲気です。想像以上に勉強はきつい。とくに夜間学習の時間が長くて」(2年生・松本君)