たとえばメンタルヘルスは法定外の項目だ。法律では時間外労働が月80時間を超えた人にカウンセリングを受けさせるよう決まっているが、そうでない人にまで定期健康診断で精神科の面接を受けさせるのはやりすぎで、拒否できる可能性は十分にある。
一方、必須項目である体重については測定を拒否できず、会社に内緒にしておくこともできない。残念ながら、「体重は個人情報だから教えたくない」という理屈も通らない。
「個人情報保護法では、会社が個人情報を取得する場合には従業員の同意が必要とされています。しかし、他の法律で定めがあるときは適用外。体重については労働安全衛生法に定められているので、個人情報保護法を盾に取ることはできません」(前田弁護士)
救いなのは、健康診断実施の事務に従事した人がそこで知りえた秘密を漏らす行為は法律違反ということだろう(労安法104条)。必要があれば直属の上司に通知されるケースもあるが、必要もないのに健康診断の結果を社内に広めるのはアウト。秘密を洩らした人は6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金で、会社も刑事罰を受ける。プライバシーに配慮がされているとはいえ、センシティブな情報を会社に知られるのは抵抗があるという人もいるだろう。最後に前田弁護士は、次のように見解を述べてくれた。
「私は必須項目を増やしてもいいと考えています。ただ同時に、会社が健康情報を利用できる範囲や手続きについて厳格に決めるべき。たとえば仕事に支障がないのに健康情報を見て不利益な処分をするのはダメ。この点は法整備が必要だと思います」