会話のキャッチボールには言葉の翻訳が必要になる。
「先見性を高めるためにアンテナを常に高くしている。若い人には若い人の目線に合わせて話をし、彼らの感性を参考にしようとするなど、経営者の方々はコミュニケーション調整能力が非常に高い」と、外資系企業を担当するロバート・ウォルターズ・ジャパンの岩屋広志朗マネージャー。さらに「内部昇格した役員などは、話が合理的でわかりやすく、かつオペレーション能力が高い」と、IT系企業を多く顧客に持つキープレイヤーズの高野秀敏代表も言う。
「プロジェクトがよい結果を出していても、上に乗っかっていただけの当事者意識がまるでない人は論外」(中村さん)。仕事を説明する際、自らの体験を自分の言葉で語れない人は先が見えてしまうという。
「誰が正しい」より「何が正しい」か
また、単純な営業的コミュニケーション力では資質を測れないのが技術系だ。
「技術系の人は、わかりやすくというより、言い回しなどあえて変化球的なワードを相手に投げる人が多い。『考えさせる人』が、最終的には上に立っています」(森さん)
IQに加えEQの高さも必要だ。高学歴で培った専門用語を並べ、自分の言葉に酔いしれて相手に伝わらないのでは本末転倒。役員になれるどころか、その候補にも挙がれない。
役員には、いずれの企業であっても「説明力」「俯瞰力」が絶対条件。上司と異なる見解でも、企業全体を見てバランスの取れた正論が言えるかどうかが重要だ。
「上に迎合せず、商売にストレートであること。サラリーマンでなく、会社のために意見できる人」(久乗さん)。時にはリスクを取り、誰が正しいかより、何が正しいかでジャッジできる器が求められている。
逆にそこそこの出世で止まってしまう人は、「スキルのみに頼る傾向がある。言うことは正論だが、全体を見ず目先のことに集中している」(長谷川さん)と、話し方1つでも「資質」が問われるのである。