50万豪ドル以上で「永住ビザ」

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外国生まれの人口比率

図の「外国生まれの人口比率」を見ると、移民政策に積極的で国民1人当たりGDPが高い国が上位を占めている。日本はわずか1%だが、1位のルクセンブルクは人口の40%以上が外国出身者である。2位のシンガポールはいわずとしれた移民大国。私が同国政府のアドバイザーを務めた70年代は人口200万人程だったが、積極的な移民政策の結果、今は550万人近い。

3位のオーストラリアは、今でこそ多文化主義で知られているが、かつては白豪主義(白人優先主義とそれに伴う非白人の排除政策)の国だった。それが少子化や労働力不足の問題から72年に白豪主義を撤廃、以降、台湾、香港、シンガポール、中国本土から華僑を中心に約800万人の若い中国系移民が流入した。1000万人台にとどまっていた人口は今や2300万人を超えている。

オーストラリアの移民条件は非常にハッキリしていて、オーストラリアにとって役に立つ人材かどうか、そしてオーストラリア政府が面倒を見なくても生活できる資産があるかどうかである。地元のオーストラリア大使館に行って、自分の特殊技能を申告したうえで、HIV検査などを行い、現地の銀行口座に50万豪ドル以上あることを証明すれば、数カ月後にパーマネント・レジデンス(永住ビザ)がもらえる。パーマネント・レジデンスでの一定期間、学歴や犯罪歴などを評価されて問題がなければ、申請次第で市民権も付与される。

若くてお金のある中国系の移民が住み着いた先でじっとしているわけがない。商売上手だからすぐにビジネスを始める。教育熱心で優秀な子弟が多いから、彼らが入ってくると学校のレベルが上がる。移民先のコミュニティが活性化するのだ。

もしオーストラリアが白豪主義のままであれば、あるいは宗主国のイギリス系だけでやっていたら、あり余る資源にあぐらをかいて老大国として衰えていただろう。しかし中国系を中心に移民が増え、それにギリシャやイタリアから職を求めて渡ってくる移民が加わってオーストラリア経済は今や国や地方自治体の借金はほとんどない。

表ルートばかりではない。オーストラリアはインドネシアとの間にある自国領のクリスマス島などにボートピープルの収容施設をつくっている。オーストラリアにやってきた難民はそうした収容施設で保護され、英語やオーストラリアの歴史や文化を学ぶ。つまりオーストラリア化教育を施され、最後には市民権が与えられて国内各地に送られる。これも移民政策の1つだ。

オーストラリアというと資源国だから調子がいいと思われがちだが、ポイントはそこではない。移民政策によって新興国と同じようなデモグラフィになっている。それだけ若さとエネルギーに溢れているのだ。