給与が減って損するのは誰なのか。年収の増減を職位別に見ると、「減った」と答えた人は会長・社長クラスで27.5%、課長クラスで30.4%に達し、一般社員の21.2%を上回った(図3)。人件費減のしわ寄せを受けるのは、規制で守られている下の社員より、経営責任を問われる経営トップや、組合員ではない中間管理職のようだ。
とはいえ、一般社員も安心はできない。一般社員の収入は残業時間に左右されるが、残業時間を職位別に比べると、一般社員は課長や部長・次長クラスに比べて短かった(図4)。
「震災後、サラリーマンの所定外労働時間は減り続けています。原因は2つあります。1つは、震災時にサプライチェーンが分断するなどして仕事そのものがなかったから。少ない給料を残業手当で補っていた一般社員は、この影響をもろに受けたはずです。一方、仕事はあっても、人件費抑制のために一般社員の残業を意図的に減らしたところもある。こうした会社では、残業代のつかない中間管理職にしわ寄せがいきました。どちらの層にとっても歓迎すべき状況ではないかもしれません」(小宮)
転職についてはどうか。この1年で転職を検討したことがある人は、20代で4割に達したものの、30~40代は3割以下だった(図5)。
「転職市場には、35歳以上になると求人が激減する“35歳限界説”があります。04年の法改正で求人に年齢の条件をつけてはいけないことになりましたが、その後も企業は人材紹介会社に裏で年齢の要望を出しています。ただ、企業の採用担当を責めるのは酷です。年齢で給与のベースが決まる人事体系において、年齢で線引きをするという企業側の判断は、ある意味で合理的。この状況を変えたければ、終身雇用のシステムから変えていかないとダメです」(城氏)