年収に関しては、低年収層ほど自分の年収額に不満を持っている(図2)。ある意味で当然だが、注目は年収800万~1000万円の壁。これより少ないと年収への不満がグッと増える。
「世界的には、年収7万5000ドル(約600万円)までは収入と幸福度が比例し、それ以上になると年収が増えても幸福度に貢献しにくくなるといわれています。税制や物価の違いを考慮すると、日本の場合は800万~1000万円前後が分岐点。地域でいうと、地方なら800万円、東京なら1000万円あたりがボーダーになるのではないでしょうか」(城氏)
肝心の年収はどう変わったか。前年と比較して「増えた」と回答した人は38.1%で、「減った」の23.4%を上回った。09年、10年の調査では減少傾向が顕著だったが、ビジネスマンの年収はようやく下げ止まったのか。経営コンサルタントの小宮一慶氏は、「減っていた賞与が、少し回復しただけ」と分析する。
「企業は08年のリーマンショックを賞与カットで乗り切りました。10年度に入ると、減り幅が大きかった製造業を中心に賞与を若干戻す動きが見られた。今回、年収が増えたという回答が多かったのは、その恩恵を受けた人がいたからでしょう。ただ、それでもリーマンショック前の水準には戻っていません」
マクロの視点から見ると、長期的な下落傾向は変わらないという。
「労働者の給与の源泉は名目GDPなので、その増減を追えば給与のトレンドがつかめます。具体的には、07~09年の3年間で名目GDPは約8%減少。10年に下げ止まりましたが、震災前からふたたび減少に転じ、11年7~9月期で少し戻すまで3四半期連続で減り続けました。長期的な下落傾向は明らかで給与もこれに連動して減っていくはずです」