では、夏休みはどれにあたるのか。これについては製造業とそれ以外で分けて考えたほうがいいだろう。
工場はみんなで順番に休むと効率が悪いので、休むときはみんなで休んでラインを止める。そのため休日として強制的に休ませるか、年次有給休暇のうち5日を除いた日数について、労使合意のうえで全員一斉に同じ日に有休を取る“計画年休”制度を採用する場合が多い。どちらにしても、休日か休暇かは明確であることがほとんどだ。
はっきりしないのは、ホワイトカラーやサービス業に多く見られるように、休む日を労働者が選べる会社だ。
「労働者が休む日を決められる点を考慮すると、夏休みは休暇のように見えます。ただ、慶弔休暇のように就業規則に明記されているケースは少ないし、休んだら年次有給休暇が減るわけでもありません。就業規則上の休暇でも年次有給休暇でもないとしたら、休日になってしまう可能性もあります」(同)
夏休みの法的位置づけがあいまいだと、トラブルが起きる可能性もある。たとえば夏休みを取らずに出勤した場合、夏休みが休日なら、会社側は時間外労働として割増賃金を支払わなければならない。しかし夏休みが休暇なら、割増賃金はなし。また、夏休みを取る日の決定も、休日なら会社が決めるが、休暇なら労働者がイニシアチブを取るという違いがあるからだ。
法的位置づけが明確な有給休暇ですら、給与や取得方法で法的な争いが絶えないのだから、それがあいまいだとさぞトラブルが多いと想像できるが……。
「労使間でトラブルになるケースは稀です。日本人に根付いた習慣だからでしょうか、夏休みには会社側も労働者側も寛容になっているようです。そこで争うことは感覚的に嫌なのかもしれませんね」(同)