MIT、ハーバード大学を擁するボストンは、「先取の気質」に満ちている。(写真=dpa/PANA)

今日本の課題となっている「成長戦略」を考えるうえでも、破壊的イノベーションは重要である。「既得権益」を批判することには意義があるが、ともすれば批判のための批判になってしまう。

むしろ、今後の世界を考えたときに必要な技術の開発に傾注する。どのようなシステムが有用なのか、必死になって考える。その結果、画期的なイノベーションが起これば、既得権益は自然に破壊されていくものなのではないか。そんなことをボストンで考えた。

滞在の最終日、日本美術のコレクションで知られるボストン美術館から、ハーバード大学までの1時間余りの道のりを歩いた。途中にはボストン大学もあり、学術都市としてのボストンの底力を感じた。

ハーバード大学の生協にも、「破壊的イノベーション」に関する書籍が置かれていた。ボストンのあるマサチューセッツ州は、全米でカリフォルニア州に次いでベンチャー・キャピタルの投資額が多い。ボストンの底力は、アメリカの活力である。

既得権益を単に批判するだけでは、世界は前に進まない。むしろ、「ほかの道」を探ること。社会の問題を解決する可能性など、いくらでもある。大切なのは、実行すること。世界は、そんな楽観的な人たちによって変えられてきた。

ハーバード大学、MITは世界に冠たるボストンの「両雄」だが、そこに満ちる先取の気質は、やがて自らの現在のあり方さえをも脅かすに至るのかもしれない。私はそんな予感を抱いた。

ネット上の授業の公開は当たり前。課題として提出されたエッセイの機械採点システムも開発されつつあると聞く。大学が、従来の大学ではなくなる、いわば自己否定、自己超克こそが、破壊的イノベーションに携わる者の最高の誇りなのだろう。

(写真=dpa/PANA)
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