先進国ドイツも日本と同じように「少子化」に悩んでいる(AFLO=写真)

【田原】フランスは、先進国でも珍しく、合計特殊出生率を高めることに成功しましたね。なぜうまくいったのですか。

【新浪】フランスは、たとえ結婚を伴わない出産であっても、子どもが生まれたら社会として全部面倒を見てくれる仕組みです。だから安心して子どもを産めるのですが、その半面、社会保障費があまりにも大きくなりすぎて、問題になっています。日本がフランスの真似をするとすれば、他の部分を削って社会保障費とのバランスを取らないといけない。具体的にどこを削るかというと、まことに申し訳ないですが、高齢者の方々に使っている部分でしょう。子どもへの投資は、経済の乗数効果が高いのですが、75歳以上にお金を使うのは乗数効果が低い。その点も考えて社会保障とを見直すべきです。

【田原】でも、高齢者に対する予算の見直しは実現できますか。介護保険は1割負担ですが、これを増やそうとしたら年寄りたちが猛反対して、できなかった。彼らは、農協以上の強敵ですよ。

【新浪】私は社会保障を、その世代の中でやってもらえばいいと思っているんです。世代間でやろうとするから、資産を持っているはずの65歳以上の方々が社会保障費で現役世代に頼るという構図ができてしまう。65歳以上は65歳以上の世代の中で問題解決してくれれば、若い人たちの負担も減り、元気を取り戻すと思います。

【田原】フランスは国が税金を使って出生率を上げましたが、アメリカは、地域のコミュニティやボランティアが子どもたちの面倒を見ます。日本でコミュニティが一番発達しているのは沖縄で、出生率も高い。他でもできますか。

【新浪】東京も昔は町内会が存在して、しっかりした町内会長がいたんですよね。出生率向上のためには、地域コミュニティを含めた社会システムを再構築することが必要です。私が期待しているのが、NPOやNGOの活動です。民主党政権のときに寄付したお金を税控除する仕組み(寄付金控除)ができましたが、これは民主党政権のファインプレーでした。政府が何かするより、NPO、NGOを支援して任せていったほうが、新しい公共性というものができやすいように感じます。

【田原】寄付税制の仕組みをつくったNPO法人フローレンスの駒崎弘樹さんが、こんな話をしていました。寄付金控除ができたのはマスコミに知らせなかったからだ。注目されると当時野党だった自公が反対せざるをえなくなる。静かにしていたから自公の協力も得られて成立した。「拍手なき勝利」だと。

【新浪】なるほど、素晴らしいですね。安倍内閣は長期政権になりますから、民主党政権でよかったものもやってみようよ、というくらいの受容力を発揮すべきです。それに駒崎さんのような若い人たちが活躍したとなれば、彼に触発されて「こんなアイデアもあるよ」という人が出てくるかもしれない。そのほうがお役所頼みから、“共助”の流れに変わっていくのではないでしょうか。これは、国、地方両方の負担軽減にもつながります。