――海外に比べて不正が極端に少ないのではなく、申請時の不正を見抜けていないだけだと?

【二宮】残念ながら、そういうことだと思います。ですから、協会に今年から不正請求対策室を設け、加盟各社のデータを一元化するとともに、英米などで使用されている不正請求分析ソフトを取り入れて詐欺や不正の発見を進めていきたいと考えています。

保険のわかりやすさと安心感を向上させるという点については、協会のガイドラインを改め、まずは自動車保険の募集文書などの文章表現をわかりやすいものに変えていきます。今後は火災保険や傷害保険、医療保険についても順次同様の改定を進めます。また、損害保険募集人のスキル向上のための資格制度を導入するほか、業務全般の品質向上を図ってまいります。

3点目は、損害保険事業の環境整備です。たとえば新興国へ日本のノウハウを提供し、保険のインフラ整備に貢献するということです。1例をあげれば、インドネシアには損害保険料率の算定団体がまだ存在しません。 官民一体で、その立ち上げに協力します。他の国でも同様の貢献をしていきたいと考えています。

もちろん、損害保険事業の持続的発展と健全な成長のために、日本国内の制度問題にも積極的に意見表明や要望をしたいと思っています。

――アベノミクス効果で株高が続いています。損保各社の経営にもよい影響が出ていますね。

【二宮】ええ。各社とも昨年の中間決算時点では保有株の含み損が大きかったのですが、年度末決算ではそれが様変わりして、含み益が出るようになりました。

いま民間企業は円安・株高を背景として経営者のマインドが好転しています。流れを変えるチャンスが来たと思います。

そのなかで、私たちは社会のインフラの1つを担っています。リスクを引き受けることにより事業活動の下支えをしています。ですから、成長の後追いをするのではなく、保険のノウハウによって成長をサポートしたいと思っています。

日本損害保険協会会長 二宮雅也
1952年、兵庫県出身。中央大学法学部卒業。74年、日本火災海上保険に入社。98年秘書室長、常務執行役員、専務執行役員などを経て2011年6月から日本興亜損害保険社長。12年4月からNKSJホールディングス会長を兼務。13年6月から日本損害保険協会会長。
(面澤淳市=構成 尾崎三朗=撮影)
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