上野によると、このような男性中心の企業社会は、構造的に女性を差別して管理職から排除している。

「課長級以上になるには、勤続15年とか20年が必要でしょう。それを果たせる女性がまず少ない。途中で結婚と出産を経験するから。そうすると、管理職になれるのは、シングルもしくは婆さん(母親)がついていて子育て負担がなかった女。特殊なケースしか残らない」

同じ会社で何十年も絶え間なく働き続けないと出世できない。この雇用体系自体が女性差別的なのだ。

さらに上野は、1990年代半ば以降は若者も排除されつつあると指摘する。象徴的なのは、95年に日経連(現・経団連)が出したレポート「新時代の『日本的経営』」。労働者を「長期蓄積能力活用型」(幹部候補)、「高度専門能力活用型」(専門職)、「雇用柔軟型」(使い捨て)の3つに分けるとしたものだ。

「女と若者を雇用調整のための安全弁、使い捨て労働力にしてもいいとやったわけ。このゴーサインが出て、労働ビッグバンといわれる労働法制の規制緩和が起きた。非正規で入った人たちは、昇進昇級関係なしのところに留め置かれるようになった。そもそも正社員にならないと管理職になれない、さらには長期に勤続しないと管理職になれない」

確かにダブルパンチである。「不況でも競争力を維持する」という大義名分の下、実体は中高年男性の既得権を守るために、女性と若者を切り捨てたのだ。

(文中敬称略)

(撮影=向井 渉、川本聖哉)
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