自分の考え方を変えていくプロセス

冒頭で触れたように、不知火病院にはうつ病専門の医療施設「ストレスケアセンター」がある。その建物は有明海に注ぐ川の河口に面し、暗さや閉塞感がまったくなく、まるでリゾートホテルのような佇まいだ。そして、ストレスケアセンターには、「海の病棟」と呼ばれる48床の病棟がある。いくらホテルのようでも、そこに入院する患者はやはり重篤なのか。

「半分以上が希死念慮もある、つまり死にたい気持ちを持っている患者さんです。でも、症状が重いから入院させるという判断を私どもがしているわけではありません。外来でなかなか治らず、自ら入院を希望してくるパターンがほとんどですね。入院の効果は確実にあります。通院しながら長いこと自宅療養していたのだがよくならない、といった患者さんが、入院しただけでどんどん治っていく。難しい治療をしなくても、自然と治る場合があります」

なぜ入院が効くのか。徳永院長の説明によると、「それは自宅療養が難しいから」となる。休職して療養に専念しても、昼間に自宅で1人という毎日が続けば、孤立感が深まりマイナス思考に拍車がかかる。散歩も近所への気兼ねがあってしにくいし、子供から「お父さんどうして仕事に行かないの?」と聞かれたら辛い。入院すればそれらのストレスから逃れられる。

入院期間は3カ月ほどの患者が多い。前述したように、うつ病患者が抱えている問題は個々別々なので、治療の進め方も、病棟での患者の過ごし方も人それぞれだ。ただし、入院も外来も休職中の患者であれば、大きな目標は職場復帰ということになる。よって、入院の場合は、退院予定日までのラスト4週間を「復職サポートプログラム」の利用期間として設定している。

外来の復職支援には、比較的状態がいい患者向けの「リ・スタートプログラム」(3カ月間)と、もう少し時間を要する患者向けの「トライワーク・プログラム」(半年間)がある。