心身ともに健康に過ごすにはどうすればいいか。心理カウンセラーの下園壮太さんは「知らず知らずのうちについ頑張ってしまう『いい上司、いい仲間に恵まれているとき』『好きな仕事、得意な仕事に取り組んでいるとき』など5つのシチュエーションに気をつけたほうがいい。スポーツでアドレナリンの効果で一時的に痛みを感じないように、人は『気持ちよく頑張れる』環境にいると疲れをあまり感じなくなってしまい、『気がついたら心身が疲れ切っていた』という状態を招きかねない」という――。

※本稿は、下園壮太『「がんばらない」仕組み』(三笠書房)の一部を再編集したものです。

会議
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「逃げる」ことは、合理的に正しい

うつ症状のたちの悪いところは、多くの場合「頑張りすぎ」が原因にもかかわらず、うつになることで「頑張り度合い」がさらに加速するということです。

つまり一度うつ状態になると、負のスパイラルにはまってしまい、簡単に抜け出すことができなくなるのです。

もちろん、そこから自力で脱出することも不可能ではないですが、それによって生じた「トラウマ」や「自己否定」からは、簡単には逃れられません。

うつになる最大の危険性は、こうした“二次災害”にこそ潜んでいるともいえます。

ですから、ある程度症状が進行してしまったら、被害が大きくなる前に「逃げる」ということが何よりも重要になります。「仕事を辞める」ことがこれに相当するといえるでしょう。

うつが引き起こすリスクを鑑みれば、「一刻も早く逃げる」という選択肢には、一定の合理性があるということです。

さらに、そうして“頑張る熱”をいっときクールダウンさせる機会を持つことができれば、自身の「頑張る系システム」が好ましくない方向で機能していたことに気づくことができます。

その経験値が、次なる「頑張りすぎ」を防いでくれることでしょう。

とにかくみなさんにお伝えしたいのは、

「逃げることは、けっして恥ではない」

ということ。

本書は、そうした状況に陥ることを未然に防ぐための本ですが、もしもそうした状況に自分や身近な人が陥ったときのためにも、このことだけは覚えておいてください。