不動産価格が上がり続ける街はどのようにして探せばいいのか。不動産事業プロデューサーの牧野知弘さんは「社会増と社会減から計算できる『代謝率』を見れば、その自治体が近い将来どうなるかが一目でわかる」という――。

※本稿は、牧野知弘『不動産の教室』(大和書房)の一部を再編集したものです。

「人の出入りが多い街」は不動産価格が上がる

不動産を長らく取り扱ってきて感じるのが、「たくさんの人が出入りする街の不動産は価格が上がる」というものです。

ともすると、たくさんの人が集まってくる街が成長する街、地価が上がる街と考えがちです。

なるほどかつてのニュータウンがそうでした。ニュータウンができると短期間に住民が増えていきます。新住民は活発に街に出て買い物をする、遊びに出る、周囲からみて憧れの街になる、そうした構図でした。

しかし、同じ時期に同じような年齢、同じような家族構成の世帯で形成された街は、その後は人の出入りがなくなります。

やがて街中の公園で遊んでいた子供たちは中学受験のために塾に通い、大学を卒業して街から出ます。社会人となり家族を持ってもニュータウンには戻ってきません。住民の高齢化が進行し、やがて公園で遊ぶ子の姿は見かけなくなり、街はひっそりと眠ったような街になります。

人が動けば不動産が動き、経済が回る

いっぽうで常に人が「出入り」する街はどうでしょうか。人が出ていくと賃貸アパートが空きます。家が売却に出されます。そこに人が流入してくると家を買ったり、アパートを借りたりします。不動産が動くことになります。

街に常に新しい人がやってくるということは、不動産が動くだけでなく街の経済が活発になります。新しく街にやってきた人は、家具や車、生活用品などを買いそろえます。街中にどんな商品やサービスがあるか探検に出かけます。

新しいトレンドが常に流入する街では、飲食店などが進出してきます。流行の品を扱う雑貨店がオープンします。常に不動産が動くのです。

新住民が常に存在することは、住民の発想も多様化し、交流を通じて独自の文化を発信できるようになります。

私はこうした状況を「街の新陳代謝」と呼んでいます。

人間の体で言い換えるなら、街は骨格であり肉体です。そして人の流出入はいわば内蔵、血液のようなものです。常に新しい血液が入り、内臓を活性化させる。骨格や肉体が多少衰えても、血液や内臓で常に新陳代謝が行われていれば、街の健康状態が保たれるのです。

ニュータウンのオールド化はまさに、流れる血液が沈殿し、内臓の機能が衰え、肉体がしぼみ、骨格がむしばまれる、まさに老人の姿なのです。

崩壊した家屋
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