ぎっくり腰もヘルニアも根本原因は姿勢
腰痛は国民病ともいえます。日本人の約8割の人が「一生のうちに一度は腰痛を経験する」とのデータもあります。ほとんどの場合、「姿勢」と「動作」の影響によって椎間板が傷つくことで痛みが起こるのです。
医師、日本整形外科学会専門医。日本医科大学卒業後、千葉大学医学部附属病院などで勤務。どうやリハビリ整形外科クリニック院長。『4万人の腰部脊柱管狭窄症を治した! 腰の痛みナビ体操』など著書多数。
背骨の腰の部分は腰椎と呼ばれ、椎骨が5つ積み重なっています。椎骨と椎骨の間には、椎間板と呼ばれる軟骨があります。椎間板はクッションの役割を果たし、腰椎全体の動きを出す関節のような働きをしています。椎間板の中には髄核と呼ばれるゼラチン状の物質があり、周囲は線維輪と呼ばれる線維組織で囲まれています。腰椎が動くと、それに合わせて髄核が線維輪の中で移動し、椎間板を変形させます。椎間板が変形し髄核が動くことで人はおじぎをしたり、体を反らしたりできるのです。
しかし、猫背などで椎間板を変形させる姿勢が長く続くと、髄核がずれて線維輪の内側に亀裂が入ります。線維輪の内部には神経がないので、この時点では腰痛を感じません。髄核のずれが進んで線維輪の亀裂が外側に達すると、線維輪の外側には神経が分布しているので腰痛を引き起こします。猫背と反対の反り腰も、同じように線維輪の亀裂を生じます。女性は人に見られていることを意識して、姿勢をよくしようとするために反り腰になりやすい傾向にあります。椎間板の線維輪が傷ついている状態は腰椎椎間板症という病名となり、線維輪の亀裂から髄核がとび出すと腰椎椎間板ヘルニアになり、変形が進んで神経が圧迫されると腰部脊柱管狭窄症という診断となります。
体形より職業が腰痛に関係する
腰痛は一度発症すると「クセになる」と言われることがあり、何度も腰痛を繰り返すケースがありますが、これには理由があります。椎間板は血流に乏しいため、傷が治りにくい組織なのです。椎間板の傷が治癒する前に再び悪い姿勢や動作をすると、治りかけた傷口が再び開いて、腰痛を繰り返すことになるのです。
「腰痛診療ガイドライン2019(改訂第2版)」(以下、腰痛ガイドライン)では、腰痛の原因として脊椎由来、神経由来、内臓由来、血管由来、心因性その他に分類されていますが、最も多いのは背骨である脊椎由来の腰痛です。腰痛の中でも特に注意する必要がある原因として、以下の4つがあげられています。
① 悪性腫瘍:がんの既往のある人で、体重減少を伴う腰痛の場合は、がんが背骨に転移しているおそれがあります。
② 感染:腰痛に加えて熱が続いている場合は、背骨に菌が入る化膿性脊椎炎を起こしていることもあります。
③ 骨折・骨粗鬆症がある人の腰痛では、転んでなくても腰椎圧迫骨折を起こしていることがあります。
④ 神経麻痺:腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症で、下肢の麻痺や膀胱障害を伴う腰痛はすぐに医療機関を受診してください。
腰痛ガイドラインによると、腰痛患者の職業で多いのは運輸、清掃、看護、介護、農業などと報告されています。これらの職業では、重いものを持ち上げたり、前かがみの作業をしたりして、腰に負担がかかるため腰痛になりやすいと思われます。腰痛の原因はあくまでも「姿勢」と「動作」です。痩せている人と肥満の人に腰痛が多い傾向があると報告されていますが、腰痛との関連性は弱いです。
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