親が亡くなった後の実家の遺品整理は子供にとって大きな負担になる。介護の現場をつぶさに取材しているフリーランスライターの旦木瑞穂さんは「生前整理は『縁起でもない』『死に支度だ』などと敬遠されることもあるが、コレクションや大切に保存していたモノを専門業者に見積もりをしてもらうと予想外の高値がつくことがある」という――。

※本稿は、旦木瑞穂『しなくていい介護』(朝日新書)の一部を再編集したものです。

親の「生前整理」をすることにはメリットがあった

前回原稿で紹介した通り)「生前整理」にはさまざまなメリットがある。しかしそれでも「面倒臭い」と思う人のためにもうひと押し、以下のような方法がある。自分に合った方法があれば、ぜひ試してもらいたい。

(1)写真の「生前整理」

写真の整理は、デジタル化するのも一つの手だ。

まず、大津さんの「生前整理」の手順にもあったように、写真も「要る・要らない・迷い・移動」に分けると良い。「要る」ものは残し、「要らない」ものは捨てる。「迷い」は半年などの期限を設けてとっておき、半年後にもう一度判断する。「移動」は自分ではなく、家族や友人・知人が持っていた方がいいものなので、しかるべき相手に渡す。こうして残った写真を、デジタルでもアナログでもいいので、「ベストショットアルバム」として残しておけばいい。

デジタル化する場合は、業者に依頼する方法のほか、自分でスキャナーを用意する方法もある。今は、アルバムから剝がさなくても簡単に個別にデジタル化が可能なスキャナーや、バラの紙焼き写真を差し込むと次々にデジタル化した写真が保存できるスキャナーもある。

これまで介護や終活について取材してきた筆者は、「写真の生前整理には、良い効果しかない」ように感じる。

たとえば、高齢になって後悔ばかり口にしていた人が、写真整理をするために昔の写真を見返していたら、幸せそうな自分の写真を複数目にするうちに、「自分の人生はそんなに悪いものではなかった」と思い直したケースがある。また、子どもの頃から母親とそりが合わず、大人になってから母親と距離を置いていた人が、写真整理をすることで、子どもの頃から自分に向けられていた母親の眼差しに気づき、「私は母に愛されていたんだ」と思い直し、母親と再び交流するようになったケースもある。

多くの場合、写真には幸せの瞬間がおさめられている。それを思い出させることで、自分にとって大切だったものに気がつくことができるようだ。

たくさんの写真
写真=iStock.com/thinkomatic
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