東大合格を目指した人工知能「東ロボくん」プロジェクトを率いたAI研究者の新井紀子氏が、AIを使いこなすうえで必須という「シン読解力」。その能力は、何歳になっても「トレーニングによって身に付けることが可能」だという。

大人の読解力不足が子どもより深刻なワケ

私は2018年に『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』という本を書きました。しかし、このタイトルが「大人は読めるが、子どもは読めない」と解釈されたのだとしたら、「子どもたち」に申し訳ないことをしたと思っています。AIに日本語を学習させるためのノウハウを応用して開発した「リーディングスキルテスト(RST)」の結果を分析したところ、ホワイトカラーの現役ビジネスパーソンも驚くほど「教科書や新聞を読めていない」ことがわかったからです。

RSTは、教科書や辞書のような「知識や情報を伝達する目的で書かれた自己完結的な文書」の読解力を測定・診断するツールです。21年の春以降、小学5年生以上であれば誰でも受検できるようになり、これまでに50万人以上が受検してきました。現在では多くの企業の新入社員研修や採用試験でも活用されるようになったのですが、その結果から「子どもたちだけでなく、大人たちも読めていない」事実が見えてきました。