空想虚言症の人が語る話が現実と食い違っていることに気づくためには、まず、現実についての知識が必要になります。

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単なるウソつきと、空想虚言症

今は世の中が複雑になり、自分の専門分野以外については、多くの人が「世間知らず」になっています。特に森口氏の話などは、専門知識を用いて精緻に構築されていて、容易には疑問を持たせないようなリアリティがありました。専門外の人が騙されても、しかたないとも思えます。

ただ、見抜く方法はあります。

私はたまたま問題の発表をテレビで見たのですが、森口氏がパネルに貼られた模造紙を背にして研究内容を説明していることに違和感を覚えました。学会で見かける「ポスター発表」の形式だったからです。

今日では新しい研究成果は、速報性を重んじ、まずは権威ある科学雑誌のインターネット版で発表されます。学会でも、話題性のある研究については講演形式で発表されます。メディアに注目されるような研究が「ポスター発表」になるとは、常識的に考えられません。

また、画面に映る森口氏は、自分が救った患者について陶然とした様子で語っていました。その表情からも、「ちょっと変だな」という印象を受けました。こういうときはふつう、手柄を誇ったり、逆に謙虚にアピールしたりするものです。しかし森口氏は、自ら語る物語に完全に酔いしれていました。このタイプの人が職場にいることはまずないと思いますが、もし疑わしいところがあれば、このような表情に気をつけたらいいと思います。

聖路加国際病院精神科部長 
大平 健

1949年、鹿児島県生まれ。東京大学医学部卒業。『やさしさの精神病理』『顔をなくした女』など著書多数。
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(構成=久保田正志 撮影=永井 浩)