子供の「やりたい」はそのときの気分でしかない
近年、首都圏の中学受験が過熱している。地域によっては、小学校のクラスのほとんどの子が中学受験をしているところもある。
だが、地方出身や公立出身の親にとっては、中学受験は未知の世界だ。ネット情報や子供の受験を経験した親たちの話を聞くと、かなり過酷であることが伝わってくる。そんな現実を見聞きして、小学生の子供を夜遅くまで塾に通わせるなんてかわいそう。子供が子供らしく伸び伸びと過ごせないのは、どうなんだろう……? と中学受験をさせることへの罪悪感を抱く親は少なくない。
一方で、まわりの子供たちが塾に行き始めるようになると、本当に地元の公立中でいいんだろうか、うちの子だけ置いてきぼりになってしまわないだろうか、という不安が襲ってくる。
そんなときに、救いのひと声になるのが、「私も中学受験をしたい!」という子供からの志願だ。すると、「その言葉を待っていました!」とばかりに、これまでの葛藤がきれいさっぱり消える。受験を勧めたのは私ではない。自分から「やりたい」と言ってきたのだ。だったら、頑張るしかないよね? そうやって責任転嫁ができることを、しめしめと思っている親は案外多い。
だが、期待してはいけない。なぜなら、子供の「やりたい」は所詮気分でしかないからだ。
「自分だけ塾に行かないのはイヤだ」
近年、中学受験を始めるケースとして、もっとも多いのが「子供から受験をやりたいと言い出した」というパターンだ。かつて、中学受験といえば、一部の教育熱心な家庭が行うものだった。しかし、今は首都圏では約5人に1人の小学生が中学受験をする時代だ。地域によっては8割ほどの子供が中学受験に挑戦していることもある。こうした環境にいると、低学年の頃から塾通いをしている同級生も少なくない。
そして、まわりの友達が一斉に塾に行き出すのが、小学3年生の2月だ。その前に模試や入学テストの話などが子供たちの間でもちらほら出てくるため、「自分だけ塾に行かないのはイヤだ」という気持ちが強くなっていく。特に、「みんなと一緒」を好む女子にその傾向がある。

