「人は替わるでしょう? 社長も必ず替わるでしょう? 人もトップもどんどん替わる。でも誰が替わっても、誰がトップになっても、“自動的に”回っていく経営の設計をしたかった。発展と淘汰とが、自動的にできる仕組みをね」
“自動的”とは象徴的な言葉だが、大宮は、新陳代謝のある組織づくりを目指してきた。組織が有機的に結合し、自動的に“アメーバ”のように互いに作用しあって動き出す仕組みだと解釈できる。
大宮の執務室の壁に、事業のドメイン別にSBU長、部長以上の名前が、入社年度、学歴などと顔写真付きで7×7センチ程度の“駒”になって、100個ほど、マグネットで留められている。SBU長の駒には、稼ぎ出した金額まで書かれている。「これは、写しちゃダメだよ」。
大宮は笑ってみせるが、大宮が必死の思いで5年間行ってきた数値化、視覚化の徹底ぶりが感じられる。69ページに及ぶ「三菱重工の新たな挑戦」の最後にはこう書かれている。
「これからの更なる打手と期待する成果―Coming Soon!―」。今年4月から社長に就任した宮永俊一へバトンは渡された。
(文中敬称略)
(的野弘路、松隈直樹=撮影)