日本の中絶手術は、子宮の胎児を掻き出す「掻把(そうは)」が一般的だ。だが、先進国では服薬で済ませる方法が主流になっている。フランスと日本で流産を経験した大阪大学元副学長・刑法学者の島岡まな教授は「20年前ですら、フランスではたった一粒の服薬で処置できた。日本が遅れている背景には、女性が自己決定権を持つことが許されていない現実がある」という――。(聞き手・構成=ライター堀内敦子 前編/全2回)

自分の体なのに「男性の同意」が要るなんて

もう、天国と地獄の差がありました。

25年ほど前、ここ大阪に来てから流産したときの話です。出血したため婦人科に行ったら「ああ、これはもう手術ですね」と言われ、3日くらい入院することになりました。当時、結婚していたフランス人の夫がちょうどそのときはフランスに戻っていたんです。