小沢一郎民主党元代表の政治資金規正法違反事件が、法務・検察首脳人事を直撃している。

8月11日、法務省は、笠間治雄検事総長に次ぐナンバーツーの東京高検検事長に小津博司最高検次長検事を据えた。これにより小津氏の次期検事総長就任が確実になったが、その陰で、かつて検事総長候補として将来を嘱望されていた岩村修二仙台高検検事長が名古屋高検検事長に就任、検事総長レースから完全に脱落したのだ。前任の藤田昇三氏は名古屋高検検事長で定年退官しており、岩村氏も名古屋で63歳の定年を迎えそうだ。

岩村氏は東京地検検事正として小沢氏の政治資金規正法違反事件捜査を指揮した人物。捜査の過程で“小沢氏起訴は可能”との誤った見通しを当時の検察首脳陣に伝えたとされ、首脳陣の逆鱗に触れたと言われている。

「岩村氏は東京地検検事正から仙台高検検事長に異動になったが、大林宏前検事総長から毛嫌いされていた。仙台高検検事長になった時点で検事総長の目はなくなっていた」(検察OB)

また岩村氏とともに小沢捜査を推し進めた大鶴基成最高検公判部長も8月1日、定年まで7年近く残して退官した。東京地検特捜部長などの要職を歴任した幹部がこれだけ早く退官するのは異例のこと。検察内部では「小沢問題で首脳陣と対立したのが原因」とささやかれている。退官後は弁護士を開業するという。

また東京地検特捜部長として小沢捜査の陣頭指揮を執った佐久間達哉大津地検検事正も法務総合研究所国連研修協力部長に異動。検察の現場から外れた。

次期検事総長が確実な小津氏は以前、札幌高検検事長だったが、小津氏の札幌高検検事長への異動も“小沢氏がらみ”とささやかれていた。

「陸山会事件の前の西松建設事件で小沢氏の元秘書が逮捕された。この当時、小津氏は法務省事務次官。小沢氏ら民主党幹部は激しい法務・検察批判を繰り返し、法務省人事への介入が取り沙汰された。政界は検察人事には介入できない。そこで法務・検察は、政界が人事でちょっかいを出せないよう、念のために小津氏を法務省から札幌高検検事長に異動させたと噂されている」(司法関係者)

9月26日に小沢氏の元秘書3人の判決が出るが、その内容にかかわらず検察は大きな代償を払わされた格好だ。