「どじょう」のキャッチフレーズが浸透し、まずまずのスタートを切った野田佳彦内閣だが、最大の頭痛のタネは小沢一郎元代表率いる党内最大勢力、小沢グループの動きだ。

「もし野田首相が財務省の言いなりになって消費税を増税するつもりなら、小沢グループは徹底抗戦し、いざとなったら民主党を割って新党を結成する」(小沢グループ中堅代議士)と牽制する声が上がっており、野田氏の対応次第では民主党が分裂する恐れがあるからだ。

「小沢グループが推した海江田万里前経産相は143票も獲得した。国会で泣いた海江田を擁立すると親方(小沢氏)が言ったときは、みんなエーッと不満の声を上げたが、親方がやれというなら仕方がないから推した。海江田のようなボロ神輿でもグループの票がほとんどこぼれなかったのは大きい」(前出中堅代議士)

小沢グループには「民主党マニフェストの遵守を掲げる小沢グループこそが民主党の本流」という自負心が強く、民主党の他のグループに比べ結束力は強固だ。

このため野田氏は、小沢氏に近い輿石東参院議員会長を幹事長に抜擢。小沢グループの山岡賢次、一川保夫両氏を入閣させるなど配慮を示したが、それで小沢氏側を満足させられたわけではない。

ポイントは現在、130億円といわれる潤沢な党の資金を誰が握るかだ。

小沢氏が代表、幹事長を務めていた2006年から10年まで、民主党の資金は事実上小沢氏が一手に掌握、豊富な党資金が小沢氏の権力の淵源になっていたとみられている。この間、小沢氏に近い民主党議員5人に党の資金37億円が支出されたが、いずれも使途は不明だった。

これを踏まえ、菅前首相ら反小沢グループ側は、小沢氏側を幹事長や党の財務委員長から締め出し資金ルートを寸断。小沢氏側は資金面で苦境に陥ったという。

「小沢氏にとって党資金を握る幹事長の奪取が今回の代表選挙の隠れた争点だった。小沢氏に近い輿石幹事長の誕生で小沢氏は目的を果たしたようにみられているが、輿石氏はしたたか。前回の参院選で輿石氏は落選寸前まで追い詰められた。このとき輿石氏は、“政治とカネ”で不人気だった小沢氏との関係について『私は小沢さんと関係ない』と発言し、小沢切りに走った。輿石氏は必ずしも小沢氏の手駒ではない」(全国紙政治部デスク)

輿石氏の動きは要チェックだ。