男女の関係を良好にするコミュニケーションは何か。セックスさえしていれば自分たちは円満だというのは思い込みだという。臨床心理士の平木典子さん、明治学院大学心理学部心理学科教授の野末武義さんの共著『大切な人とうまくいく「アサーション」』(三笠書房)より紹介しよう――。
セックスをするとお互いをわかったつもりになる
カップルが抱える悩みの中でも、セックスレスに関する悩みは、近年とても増えています。
セックスの問題は、体の問題というだけでなく、二人の関係の問題であり、突き詰めればコミュニケーションの問題です。
コミュニケーションがうまくいっていないことが、結果としてセックスレスという形になっていることが少なくありません。
かつては、男女がお互いのことをよく知った先にセックスがあり、それは相手との心理的親密さと比例するものでもありました。
ところが、現在では男女の親密さと、セックスは別のものであることも少なくありません。
近頃では、相手のことをよく知らないにもかかわらずセックス、ということも珍しくないようです。かつてのように、少しずつ知り合い、徐々に親密になっていくという感覚はあまりなく、いきなり垣根を飛び越える感じです。
そうすると、お互いのことをよく理解しているわけでもないのに、セックスをして、なんとなくお互いのことを「わかっているようなつもり」になってしまいます。
セックスは、単に性欲だけの問題ではなく、日頃のストレスや悩みの程度、二人が共有できる時間と空間、結婚に対する価値観、自尊心、子どもの頃の親との関係や、両親の夫婦関係など、さまざまなことが複雑に絡み合っています。

