相手との大事な約束を破らなければいけなくなったとき、どう伝えるといいか。気が重い会話を相手との絆を深める会話に変える方法があるという。臨床心理士の平木典子さん、明治学院大学心理学部心理学科教授の野末武義さんの共著『大切な人とうまくいく「アサーション」』(三笠書房)より紹介しよう――。
ハートを持つ夫婦
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「仕事と私のどちらが大切なのか」の最終結論

私たちは小さい頃から、「相手の立場に立ち、相手の気持ちになって考えましょう」と教わりますね。ですが、「それがいったいどういうことなのか」を本当に理解し、実践できている人は多くありません。

こんなケースがありました。

次の金曜日の夜、ディナーの約束をしていたカップルがいます。お互いにいつも仕事で忙しく、久しぶりのデートです。しかし、前日になって男性がこう言い出したらどうでしょうか。

男性「ごめん、明日は残業しなきゃならなくなった」
女性「えっ⁉ だって明日は二人の記念日だから、絶対に空けようって約束したじゃない」
男性「そうだけど、どうしても急な仕事が入って」
女性「いつもそうじゃない! 一年に1回の記念日くらい、どうして一緒にいてくれないの⁉」
男性「でも、仕事なんだからしょうがないだろう」
女性「私のことなんてどうせ大事じゃないんでしょう! もういい!」
男性「そんなこと言ったって……(ため息)」

「仕事と私のどちらが大切なのか」というのは、男女間のケンカによく出る難問です。「私のことなんて」「どうせ」あるいは、「仕事と私とどっちが大切なの?」という言葉。

いつも仕事のために約束をキャンセルされているとしたら、こう言いたくなる女性の気持ちもわかります。一方、一生懸命働いているのに、責められたりすねられたりする男性の側もつらいでしょう。

このような二人のすれ違いは、つき合いが長くなっても形を変えて、さまざまな場面で見られます。