人生のどん底で出合った1冊の本の中身

「ミニマリスト生活」と聞くと、どんな印象を抱くでしょうか? 「なんでもかんでも捨てるんでしょ」「質素倹約の鬼」「貧乏くさい」……そんなふうに思う方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、約10年にわたってミニマリズムを実践してきた私からすると、それらは事実と異なるイメージ像です。少なくとも私は、ミニマリストになってから、物質的にも精神的にも満たされた日々を過ごしながら、理想の未来へと歩み続けることができています。ミニマリズムはむしろ、より自由で、より豊かな人生を叶えてくれる生き方なのです。

私も20代半ばでそれを実感するまでは、モノだらけの部屋で暮らしていました。だんだんと片付けや家事をするのが面倒になり、ストレス発散でまたモノを買う。当然、お金が貯まるわけもなく、稼ぐために労働時間を増やし、心身ともに疲労困憊こんぱい。そんな生活を続けていたら、2015年に持病の潰瘍かいよう性大腸炎が再発してしまいました。当時、転職先になじめず、「辞めたい」と彼女に伝えたらフラれてしまい、精神的に参っていたことも、再発の要因だったと思います。下痢と下血がひどく、1日に30〜40回はトイレに駆け込むような状況で、結果的に仕事を辞めざるをえなくなりました。

そこからは1年もの間、無職・無収入の状態で過ごすことに。体調も戻らないまま、貯金は底をつき、生活保護を申請する一歩手前と、まさに人生の“どん底”を味わいました。そんなとき、フラっと訪れた書店で目に飛び込んできたのが、ジョシュア・ベッカーの著書『より少ない生き方』(かんき出版)です。「ミニマリスト生活は、すべての人の人生を変える」という言葉に惹かれ、半信半疑ながらもモノを売って生活費を補填し、シェアハウスに引っ越して家賃も下げました。

この頃から体調も少しずつ回復し、再び働き始めることができましたが、無理な長時間労働がたたり、1年後にまたもや持病が再発。外出もままならない状態に逆戻りし、虚空を見つめながら考えました。「今後も、体調の悪化→貯金が尽きる→なんとか働く→また悪化、という負のループが続くのだろうか。そんな人生はごめんだ」と。

そこで、もう一度『より少ない生き方』を熟読し、「ミニマリストになろう!」と決意しました。本書には、ミニマリズムは「夢を叶える生き方だ」とも書かれています。初読の際は、試しにモノを減らしていったら生き延びられた、くらいの感覚でしたが、今回は「苦しい人生から脱却し、夢を現実にするには、本腰を入れてやるしかない」と強く感じました。こうして8年前の秋、私のミニマリズム生活が幕を開けたのです。

ミニマリストTakeruさん家族の部屋
ミニマリストTakeruさん家族の部屋。奥にある観葉植物は、一見機能的ではないが、「ポジティブな気分にする」という重要な役割を果たしている

では、まずどんなことから取り組んだのかというと、「何のためにモノを減らすのか明確にすること」です。そこで、生まれてから現在までの出来事や、今後どんな人生にしていきたいのかを、洗いざらいノートに書き出しました。この作業を進めるなかで、自分が「起業する」「セミナー講師になる」などの夢を抱いていたことも再確認できました。けれど、社会に出て理想と現実とのギャップに苦しみ、いつの間にか夢も目標もないような人間になっていたことにも気づかされました。

学生時代の希望に溢れた気持ちを思い出した私は、次に「なぜモノを減らす必要があるのか」を考えました。答えは簡単で、「人生をシンプルにし、叶えたい夢に集中して実現を成し遂げるため」。そうと決まれば、あとはその夢や目標に関係ないモノを手放していくだけです。私は実際に、3000点以上のモノを処分しました。

すると、家じゅうがキレイになっただけでなく、今まで大量のモノに奪われていた「時間」「お金」「労力」「空間」を自由に使えるようになりました。さらに、「思考力」や「判断力」「集中力」などを高めることにもつながりました。

どういうことかというと、モノを減らす過程で自分の軸が見えてきたことで、あらゆるリソースを本当に必要な活動のためだけに割けるようになったのです。