「自前主義」の限界を悟ったトヨタ

4月30日、トヨタは新たな協業体制の発表を行った。今回の相手は、米国のIT先端企業の“Waymo(ウェイモ)”だ。この提携によって、トヨタは、ソフトウェアと自動車をつなぐ“ソフトウェア・ディファインド・ビークル(SDV)”関連分野へ本格的に乗り込むことになる。

説明するトヨタ会長 実証都市、秋に本格始動
写真=共同通信社
実証都市「ウーブン・シティ」について話すトヨタ自動車の豊田章男会長=2025年1月6日、米ラスベガス

これまで、トヨタは自力ですり合わせ製造技術を磨き、世界の自動車業界のトップに立ってきた。いわば自前主義を貫いてきた。ところが、世界の自動車業界は“100年に一度”と言われる大変革期を迎え、電気自動車(EV)やSDVなどの新分野に注力しなければならない時代を迎えている。EVやSDVの開発コストは莫大で、高度な専門知識が必要になる。また時間もかかる。

中国の開発スピードに遅れるわけにはいかない

トヨタとしても、これまでの自前主義を貫いていては、時代に取り残されることも考えられる。特定分野の有力企業との協業は避けて通れない。ここへきて、積極的に事業提携の話を進めている。それは、有力なライバルに成長している中国メーカーとの競争上、必要不可欠の戦略になりつつある。

中国では、BYDや浙江吉利(ジーリー)などの自動車メーカーが、急速にEV開発体制を築き上げた。ファーウェイやディープシークなど、ITおよびAI先端企業は車載関連ソフトウェアを供給し、自動車業界の垣根を超えた提携は増加傾向だ。

今後、トヨタがどのように協業の成果を実現できるかによって、中長期的な日本経済の展開に無視できない影響があるだろう。トヨタの戦略的協業体制の構築には、日本経済を背負う覚悟が必要だ。