──今、莫大な資産をお持ちだと思うのですが、遺産についてはどのように考えていますか?
正直、今のところは、まだよくわかりません。いくらかは家族に残すつもりですが、あまりに多くを残すのは、よくないと思っています。少なくとも40歳になるまで、2人の子どもたちは遺産を手にすることができないようにするつもりです。というのは、彼女たち自身の足で人生を歩んでもらいたいからです。
人生では重大な決断を迫られることがあります。そのようなとき、助言をしてくれる人がいるはずです。そういった助言というものは役に立つこともあるかもしれないですが、そうではない場合のほうが多いのではないでしょうか。
やはり、誰しも自分自身で調べ、考え、確信できる答えを見つけなければならないのです。そうすれば、ほとんどの場合、正しい行動をとることができるのですから。
人は、たいていの問題に関しては、それを解決する能力を自分の中に持っていて、正しい行動をとることができるものです。自分で決断して行動するほうが、他人の考えに沿って動くよりもうまくいくでしょう。
私の死後、残った資産は教育のために使いたいと思っています。かつて、私もアラバマ州の片田舎の公立高校を首席で卒業し、奨学金を受けて名門イェール大学に進学することができました。そういった教育こそが私の人生を変えてくれた。今の自分があるのも、まさに教育のおかげなのです。アメリカからシンガポールへの移住も、子どもたちの中国語の習得など、将来を見据えた教育を考えたうえでの決断でした。
ただ、学校に寄付するのではなく、学生に直接、奨学金として渡したい。教授や学校に渡せば、彼らの研究などのために使われてしまうでしょう(笑)。私は教授や学校ではなく、学生の人生を豊かにしたいと思っているのです。
1942年、米国アラバマ州生まれ。イェール大学卒、オッスフォード大学ベリオールカレッジ修了。ジョージ・ソロスとクォンタム・ファンドを設立、驚異的なリターンを上げる。37歳で引退、世界を旅する。現在、シンガポール在住。『中国の時代』『娘に贈る12の言葉』など著書も多数。