(PIXTA=写真)

「昔は給料が上がっていったのに」と過去を振り返ったり、「何かすばらしい目標を」と未来に心をさまよわせたりして、「いま」をおろそかにしていてはつまらなくなるばかりです。そんなときには、自分の意識が過去や未来に飛んでいっていることを自覚して、「いま」に心を引き戻すようにします。「いま、この瞬間」に集中することが、「つまらなさ」を払拭する一番の方法です。

やりがいを求める裏に「自分には優れた能力があるのだから、それに見合う立派な仕事が与えられてしかるべき」という慢心が潜んでいる場合もあります。慢心が強いと、レベルが低い仕事に対しては手を抜くことで「この私に、なぜこんな仕事を」という不満をアピールしようとしますが、いい加減な仕事ぶりは周囲にもそれとわかってしまうもの。ゆえに周囲から「この程度の仕事を着実にこなせないような人間に、重要な仕事はとても任せられない」と思われて、逆効果になってしまうのです。

たとえつまらなく思える仕事でも、きっちりやり遂げることで周囲に好感を持って受けとめられ、認められるようになります。いい評価をもらうことは、時間がかかることでもあるのです。

さらに申せば、いまやるべきことをきちんとやらないと、自分の誇りが保てなくなるという弊害もあります。人間は無意識のうちに自分の心身の状態をモニターしているもの。手を抜いてだらだらやっていると、「この人間はだらだらしていて美しくない」と自分自身に認知され、自己嫌悪を抱くことになってしまいます。嫌悪感は誇りを傷つけ、よけいに意欲を失わせる悪循環に陥るというわけで、何はともあれ自分のために「いま」を大切にいたしましょう。

ブッダの言葉

過去を想い出して
悲しむことなく、
未来を空想してぼんやりもせず、
ただ、「今、この瞬間」へと
心が専念していれば、
君の顔色は活き活きとして、
ぱーっと晴れやかになる。
もしも君が、心をうっかりさせて、
過去や未来という
非現実に心を溺れさせるなら、
やがて心も身体も
グッタリしてくる。
まるで刈り取られたあとに
しなび始める草みたいに。

(相応部経典)*『超訳 ブッダの言葉』170

※記事中「ブッダの言葉」は、すべて小池龍之介編訳『超訳 ブッダの言葉』(ディスカヴァー刊)による。

月読寺住職・正現寺住職 小池龍之介
1978年生まれ。東京大学教養学部卒。2003年、ウェブサイト「家出空間」を開設。現在は「正現寺」と「月読寺」(東京・世田谷)を往復しながら、自身の修行と一般向けに瞑想指導を続けている。『考えない練習』など著書多数。
(構成=岩原和子 撮影=向井 渉 写真=PIXTA)
【関連記事】
我慢できない仕事がみるみる好きになる法
なぜ私は「働きがい」が見つからないか
やりたい仕事を引き寄せる人生の法則とは
仕事が本当につらくなったら、どうすべきか
やりたくない仕事を理想の仕事に変える技術